あの「謎の赤い路線バス」池袋でついに運行開始

街中をぐるぐる回る2ルートの「IKEBUS」

スタッフが頭を抱えていたとき、中央官庁から出向中だった区のスタッフがアドバイスをくれた。「水戸岡さんにしかできない条件にすればよい」。水戸岡氏は車両だけでなく停留所からスタッフの制服、グッズまで、あらゆるデザインをこなせる。これだけ広範囲にデザインをできるのは、確かに水戸岡氏くらいだろう。

晴れてイケバスのデザイナーに起用された水戸岡氏は、高野区長にどんな車両を欲しているのか、「取材」を始めた。いろいろな話をしているうちに、「高野区長は“赤”を欲しているんだな」とわかってきた。「赤は昔から祭りに使われている特別な色」と水戸岡氏は言う。人々に元気を与える色ともいえる。

イケバスの愛らしい「顔」は、eCOM-10ではなく、水戸岡氏のオリジナルデザインだ。そして水戸岡デザインの観光列車ではおなじみのユニークな内装。これらは、「チーム水戸岡」とも言うべき、九州艤装のスタッフが精魂込めて作り上げた。同社は東急電鉄の「ザ・ロイヤルエクスプレス」、長良川鉄道の「川風」など水戸岡デザインでは多くの実績を持つ。

見つけたら幸せ?1台だけ「黄色」

赤い塗装の外観に顔を近づけると、鏡面のように輝いているのがわかる。「この塗装にはこだわりました」という、水戸岡氏の自信作だ。同氏がデザインしたクラブツリーリズムの豪華バス「CLUB TOURISM FIRST」の塗装も鏡面のような高級感を漂わせるが、「イケバスの塗装のほうがずっと大変だった」と苦笑する。

赤い車両に交じって、1台だけ黄色い車両がある。高野区長が消滅可能性都市からの脱却を目指して、北海道の夕張市を視察した際、映画『幸せの黄色いハンカチ』のロケ地にも足を運んだ。このとき、ハンカチを見て「幸せの色とは黄色だ」と確信したという。新幹線のドクターイエローのように、「この車両に出会ったら幸せになれると感じてほしい」と高野区長は期待する。

こうして完成したイケバスの車両価格は1台3000万円程度という。QRコード対応の運賃収受機やデジタルサイネージ、車いす乗降用の電動リフトなどの各種設備を搭載すると、デザインにかける予算は残り少ない。

それでも経営の厳しい地方鉄道会社の車両デザインを多数引き受けてきた水戸岡氏には、予算の制約がある中で予算以上の結果を出すノウハウがある。「他社で同じデザインをやっても、この値段ではできない」と水戸岡氏は胸を張る。観光列車ではおなじみの“水戸岡デザイン”の内装もバスという新しい器の中では、まぶしいくらい斬新に映る。「トヨタも日産もホンダも造れない、最高の職人集団による手作りの車です」(水戸岡氏)

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