「通勤電車のドア」何カ所あればベストなのか 一時期は6扉や5扉の車両も登場したが…

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63系は安全性に問題があり、1951年には桜木町駅で切断した架線に接触、車体が炎上し100人以上が死亡するという惨事「桜木町事故」を引き起こした。だが、これは安全に必要な部分を極限まで削った戦時設計の問題であり、20m・4扉車というスタイル自体は輸送力の高い画期的な構造だった。

戦後の混乱期を脱して高度成長期に入ると、都市部の通勤需要はさらに高まっていく。そこで普及していったのが、1枚の扉よりも開口部を広くしやすい「両開き」扉の車両だ。1957年に登場した国鉄の101系電車は、4扉・両開きで扉間の席は7人がけとなった。現在の通勤電車とほぼ同じスタイルだ。

この車両をベースに3000両以上が生産された103系が全国の各線に広まったことで、通勤電車の基本スタイルが確立されたといってよい。

さらに扉を増やす試みも

こうしてスタンダードとなった20m・4扉の車両だが、乗降時間の短縮を狙ってさらなる多扉化の試みも行われた。山手線などに登場した「6扉車」だ。

一時期、首都圏各線に投入された6扉車。写真は横浜線の車両(写真:F4UZR/PIXTA)

6扉車は1990年、まず山手線に試作車が連結された。この車両はそれまでなかった20m・6扉車で、しかもラッシュ時には座席が格納されて全員が立席になる構造だった。翌1991年には、山手線の全編成に6扉車が組み込まれて11両編成になった。6扉車は京浜東北線や横浜線、中央・総武線各駅停車にも登場し、埼京線にも投入された。

混雑のひどい東急田園都市線も6扉車を導入した。2005年から10両編成のうち2両を6扉車にした編成が登場、さらに10両中3両が6扉車の編成も登場した。また、京王電鉄は1991年に5扉車を導入した。

一方、私鉄や地下鉄には1両当たりの車体が最大で18m程度という事業者も多い。車両の長さはトンネルや駅などの条件に左右される。17~18m車体の場合は3扉かそれ以下のドア数となるのが一般的だ。また、関西は阪急電鉄など、19m車体で3扉という例も多い。

だが、18m車でも多扉化への挑戦が行われた。営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線は、1990年以降に導入した03系の一部編成の両端2両ずつを5扉にした。茅場町駅のように、車端部の車両に多くの乗客が押し寄せ、その部分では乗降が激しいという状況に対応するためだ。相互乗り入れしている東武鉄道も、編成の両端2両ずつを5扉にした車両を導入した。

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