通勤客が知らない、電車「混雑率」のカラクリ 輸送力の算出根拠は各社によって異なる
このように、競合路線の台頭が輸送人員減少の理由として挙げられる路線は多いが、9位の中央線快速には競合路線の登場という要因がない。車両も、2008年度には車体幅の広く輸送力の大きいE233系への置き換えがほぼ完了しており、混雑率の算出に用いられる輸送力は2008年度と2018年度で変わっていないので、統計上は輸送人員の低下が混雑率低下の要因のすべてだ。
中央線沿線には立川、国立など人気の街がいくつもあり、神田―高尾間の平均通過人員は増加傾向にある。にもかかわらず、最混雑時間帯の乗客数が減っているのはなぜか。
考えられる理由としては、最混雑区間を並走する中野→新宿間において中央線各駅停車に移行した、または、乗車時間帯をピーク時からずらす「ピークシフト」の動きが進んだ、といった要因が挙げられる。
JR東日本は中央線快速の利用客を対象とした「早起き応援キャンペーン」を定期的に実施しており、ピークシフトを後押ししている。そう考えると、小池百合子東京都知事が打ち出した「時差Biz」は都民の間で浸透しつつあるともいえそうだ。
輸送力増えても追いつかない三田線
続いて、輸送力に着目してみよう。輸送力を改善した路線を上から順に見ていくとトップは小田急小田原線で25.5%。ピーク時間帯の運行本数が29本から36本に増えた結果だ。2018年3月の複々線効果が如実に表れているといえる。
2位は都営地下鉄新宿線の20.6%。ピーク時間帯の運行本数を16本から17本に増やしたほか、笹塚駅の引き上げ線を改良したことで、1編成当たりの車両数が長い列車の本数を増やすことができた。
一方で、3位の三田線はピーク時間帯の運行本数を18本から20本に増やして輸送力を11.1%改善したにもかかわらず、混雑率はむしろ悪化した。輸送人員の増加には追いつかなかったということだ。同率でやはり3位の横須賀線も同じ構図だ。
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