グッドイヤーと提携解消へ 住友ゴムの本音 10年以上にわたる関係に終止符

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理由の一つが事業構造の変化だ。提携当時、住友ゴムはあまり海外に展開していなかったが、現在は新興国を中心に各地に進出。ダンロップを使えない地域では独自ブランド「ファルケン」を展開しており、グッドイヤーと戦うケースも増えていた。

住友ゴムは、南アフリカのタイヤメーカーから事業を承継(関連記事「住友ゴム、アフリカへ橋頭堡」)するなど、成長が期待できる新興国市場で事業を拡大。米欧市場は停滞しており、かつてほどの重要性はなくなってきている。

提携関係があることで、グッドイヤーに「遠慮してきた」(池田社長)面もあり、解消すれば、より世界展開しやすくなる。市販タイヤ事業だけでなく、グッドイヤーが主導権を握る欧米で、現地の自動車メーカーへの新車用タイヤの拡販も図ることができる。

薄れる提携のメリット

住友ゴムは新商品の展開や新興国を中心としたグローバルでの拡販を軸とした長期計画を進めている。池田社長は「これらは、グッドイヤーとの提携とは関係なく、独力で行うことを前提としている」と話しており、提携解消が将来の成長戦略にマイナスならないと主張する。

1999年の提携当時、世界タイヤ3強の一角を占めていたグッドイヤーとの提携は住友ゴムの大きな後ろ盾になった。だが、その後、住友ゴムが業績を改善する一方で、グッドイヤーは低迷。首位ブリヂストン、2位ミシュランのシェアがそれぞれ約15%を占め首位を争うのに対し、グッドイヤーは徐々に引き離されて10%に低下。かつてのように頼りにできる相手でもなくなりつつある。

とはいえ、住友ゴムのシェアは4%。ビッグ3の背中は遠く、韓国・中国メーカーをはじめとする新興国勢の追い上げも激しい。前2013年12月期は最高益だったが、円安と原材料価格安に支えられており、必ずしも強固なものではない。

成長を維持するために、新たな提携関係を模索する局面もありそうだ。

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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