今すぐ読んでもらう必要のない年金改革の話 言ってどうなるものでもない世界はある
生産性という言葉は多義的で、いろいろな意味があるために混乱を招く言葉であるが、ここでは、付加価値生産性を議論している(「AIで本当に人間の仕事はなくなるのか? ――アダム・スミスが予見できなかった未来」(2018年2月3日)参照)。日本全体の付加価値生産性を上げるために、社会保険料を負担することもできない程度の低い付加価値生産性しか生み出せていない経営者の退場を促すのは当然のことである。
第4回年金部会(2018年9月14日)では次の発言もしている。
最終的に適用拡大をしていくと賃金率が上がっていって、企業側の負担がふえていくという形になります。けれども、今は、生産性革命を政府がやると言っているんですね。基本的にサービス産業が短時間労働者を雇用しているわけですけれども、サービス産業ですと、生産性という形で測っているものは基本的には付加価値になります。
付加価値には賃金が入っております。この賃金が上がらないことには生産性革命はできません。そういう意味で、適用拡大は正しい意味での成長戦略であり、生産性革命に寄与するわけです。この生産性革命を政府が唱えているというところが今あるわけです。
このように、成長戦略でもある適用拡大は、同日の年金部会で次のように言っているように絶対正義である。
この適用拡大の話というのは、これまで何度もチャレンジして、何度も挫折してきた話であるわけでして、先ほどもいろいろ話がありましたように、働く人のサイド、生活者のサイドから見ると、世の中なかなか絶対という言葉を使えないのですけれども、適用拡大は絶対正義なところがあるわけです。
規模要件の合理性はどこにもない
果たして規模要件に大義名分はあるのか。その説明は、2018年10月の日本年金学会総会時のシンポジウムで報告をされた、日本福祉大学教授、藤森克彦さんの発言の紹介という形で行っておく。
今後の更なる適用拡大を踏まえて、「従業員規模による適用対象区分の妥当性」について考えたいと思います。
現行制度では、経過措置ではありますが、「規模501人以上の企業を適用対象」としています。この要件は、「中小事業所の負担を考慮した」ものです。
確かに、重厚長大の製造業を考えると、従業員規模が小さければ生産性が低く、負担への配慮が求められることもあると思います。実際、製造業の「従業員規模別にみた、従業員1人当たりの付加価値額」は、従業員規模が小さければ、低い付加価値額となっています。
しかし、サービス業の中で、短時間労働者の比率が高い「小売業」や「飲食サービス業」をみると、必ずしも従業員規模の拡大にともなって「1人当たり付加価値額」が上昇しているわけではありません。
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