東京大学 エリート養成機関の盛衰 橘木俊詔著 ~怪しくなっているなんでも一番という東大像

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 ここで評者も考えてみた。東大のエリート輩出率の低下に東大入学のハードル(選別力)が高くなりすぎたことが関与していないだろうか、と。

日本が貧しかったころは、経済的に貧困な者はいくら頭脳優秀でも東大を受験できなかった。女子も東大受験を避けがちだった。そんな時代の東大は、いまよりずいぶん入学しやすかった。そのぶん偏差値秀才以上の人がたくさん入学することができた。近年、経済エリート輩出率で京大や一橋が東大より上なのは、偏差値が東大ほどではないことによるのではないか。

東大のエリート養成以外にも本書の読みどころは多い。大内兵衛を中心とした東大経済学部と経済学という学問の歴史を描いたところも滅法おもしろい。マルクス主義と近代経済学の攻防と有為転変が、活写されている。

150年以上にわたる東大史をあつかいながら、読者を倦ませない筆力はさすがである。

たちばなき・としあき
同志社大学経済学部教授。1943年兵庫県生まれ。小樽商科大学商学部卒業。大阪大学大学院経済学研究科修士課程修了、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学経済研究所、同大学院経済学研究科・経済学部を経て、同志社大学経済学部教授。その間、仏米英独で教育・研究職。専攻は経済学。

岩波書店 2730円 310ページ

  

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