相鉄沿線で人気沸騰、「そうにゃん」とは何者か 絵本や「お誕生会」まである名物広報は"ネコ"

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そうにゃんは鉄道の現場を盛り上げる役だけにとどまらない。沿線の保育園や幼稚園を訪問したり、車両センターに園児を招待したりして相鉄線に親しみをもってもらう努力を続けている。

発売した絵本にサインを書き込むそうにゃん(写真:相鉄グループ)

子ども向けには絵本まで作られた。2018年5月にそうにゃんの幼少期をテーマにした『そうにゃんとえきいんさん』、続いて同年11月に相鉄社員を目指すきっかけを描いた『そうにゃんとえきちょうさん』を発売した。舞台はかしわ台の駅だ。

担当者は「絵本を通じて駅の業務を知ってもらいたい」と狙いを説明する。これまでに、1作目は約1万2000部、2作目は約7000部が売れたという。

販売開始当初、そうにゃん自らが絵本に「そ」と書き込むサイン会を開催した。1作目のときは、各回30人×7回の先着順という事前の案内だったが、会場となった書店「有隣堂 横浜駅西口ジョイナス店」には約800人のファンが押し寄せた。

お誕生会にファンが集合

また、2019年3月10日にはそうにゃんの「バースデー サンクスフェスタ」を開催。会場は横浜駅西口のビルにあるイベントスペースだ。担当者は「車両基地のほうが鉄道らしいが、小さなお子さま連れだと線路を歩かせるのが危ないので屋内で開催することにした」と話す。

そうにゃんの「お誕生会」には多くのファンが駆け付けた=2019年3月(記者撮影)

当日のそうにゃんは、大勢のファンが待ち構える中、テーマ曲「そうにゃんです!」に乗って登場した。1年の活動を振り返るステージショーのほか、グッズ販売コーナー、子どもたちが色を塗ってオリジナル缶バッジを完成させるワークショップも用意された。

思い思いにそうにゃんの缶バッジを作る子どもたちを見て、同社グループの広報担当者は「小さなお子さまもこれを機にファンとなり、将来の相鉄線のユーザーになってもらいたい」と目を細めていた。

都心直通を機に知名度を上げて未来の利用者をいかに獲得するか。そうにゃんの愛嬌のある姿には相鉄の生き残りをかけた戦略が込められている。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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