半年で事故5件、欧州「格安高速バス会社」の実態

ライバル潰しの低価格が過酷な労働招いた?

フリックスバスは、2011年に設立されたドイツの公共交通機関運営会社フリックスモビリティ(FlixMobility)の路線バスブランドで、ヨーロッパとアメリカで事業展開している。もともとはバス事業で創業したが、後にフリックストレインのブランドで鉄道事業へ参入を果たし、2020年からはカーシェアリング事業へ参入予定となっている。

2013年にドイツ国内の公共交通機関に対する規制が緩和されると、まずはドイツ各地へ路線網を巡らし、その後2015年頃よりフランスやイタリアなどにも拠点を開設、路線網は他国へも急速に拡大していった。格安運賃の路線バス事業は大成功を収め、今やフリックスバスのブランドはヨーロッパ各国で見かけるほどの人気となった。

実際の運行は下請け任せ

ただし、同社はバスを1台も保有しておらず、路線の設定や価格設定、品質管理や顧客サービスだけを請け負い、バスの運行はすべて、各地域のバス会社へ下請けされている。販売価格のうち、25~30%をフリックスバスが受け取り、残りは運行会社が受け取るという仕組みだ。

では、こうした営業戦略に、ドライバーへの負担が極端に増すような、構造上の問題はないのだろうか。フリックスバスは、コンピューターを駆使した入念なリサーチによって、人の流れや需要を予測、バス会社が赤字とならないような収益を確保できる路線の選定や、適切な価格設定を行っているとしているが、同業他社からは、その価格設定がかなり低いことを批判されている。

フリックスバスの車両。需要の多い路線では、2階建てバスも使用される(筆者撮影)
チェコ企業のレギオジェット。フリックスバスの直接のライバルだが、同社はすべて自社で車両を保有している点が異なる。また一部、共同運行しているドイツ鉄道バスの運行も担う(筆者撮影)

チェコの民間路線バス・鉄道の最大手レギオジェットは、フリックスバスが2017年にチェコを含む中欧諸国へ参入を果たして以降、地元チェコはもちろん、その隣のドイツ、オーストリアなど周辺各国間にまたがる多くの路線で、フリックスバスと競合関係にある。

今年5月、レギオジェットのラディム・ヤンチュラ社長は、同社が長期間にわたる独自調査を行った結果、「フリックスバスは運賃で運行費用を十分カバーできない(運賃収入が運行コストのわずか55%のみ)ほど、不当に安い価格でチケット販売しているという、確たる証拠をつかんだ」と主張、「この価格設定は、明らかに市場からレギオジェットを排除させる目的のものだ」と批判し、今年5月13日に同社は証拠を手に競争保護局へ訴えを起こした。

同日に取材した大手ニュースサイトiDNESの取材に対しヤンチュラ氏は、「新規参入者が安い価格で一時的に利用客をひきつけることは問題ないが、競争相手が潰れるまで不当に安い価格で販売し続けることは、公平とは言いがたい。同業他社が撤退し、1社が市場を独占すれば、その残った会社は下げた価格以上に運賃を引き上げることになり、利用客にとっても望ましいものではない」と警鐘を鳴らす。

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