英語民間試験延期が大学入試改革に与える影響 共通テストの配点も基礎診断運用も問題だ

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2024年度から、AO入試や推薦入試での活用を視野に入れての本格実施を目指している「高校生のための学びの基礎診断」のスキームも見直しが必要になるだろう。

誤解されているのだが、現行の「センター試験」がそのまま「大学入学共通テスト」に置き換わるのではない。「センター試験」を「発展編」と「基礎編」の2つのテストに分離して行うというのが、大学入試改革議論の当初からあった構想だ。その発展編が「大学入学共通テスト」と呼ばれるようになったのであり、基礎編が「高校生のための学びの基礎診断」なのである。

2024年度からは国語・数学も民間試験活用の方針

その「高校生のための学びの基礎診断」であるが、実はすでに「英検」「数検」「文章検」などの各種民間試験への丸投げが決まっている。これを高校教育のカリキュラム・マネジメントに利用すると同時に、将来的にはAO入試や推薦入試の基礎学力証明に使おうという思惑があり、すでに試行的に一部の高校で実施されている。もちろん生徒全員から検定料を徴収して。

複数の民間試験に対して文部科学省が認定を出すという意味で、「大学入学共通テスト」における英語民間試験活用と同じスキームだ。今回、英語民間試験導入にさまざまな困難があることがわかった。このままでは「高校生のための学びの基礎診断」も同じ轍を踏む可能性がある。

「大学入学共通テスト」の炎上の陰に隠れて、「高校生のための学びの基礎診断」についてはこれまでほとんどその問題点が報道されてこなかったが、いまから厳しい目を向ける必要がある。下手をすれば、高校教育が民間検定試験対策に乗っ取られてしまうというシナリオだってありうることは、すでに「大学入試改革『炎上』の裏に潜むもう1つの火種」(2019年11月1日5時40分配信)で指摘したとおりだ。

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