MBA講師が教える「騙されやすい」数字の罠 「ランキング」「平均値」は信用できないのか?
こうなる理由は、基本的にこのランキングが大学院の教育や研究に重点を置き、また英語圏や英語で教育を行う大学が有利になるような指標となっているからです。自然科学の重みが高くなるという特性もあります。
仮に「学部卒学生の産業界での活躍」といった項目があり、それが20%程度でも重み付けされれば随分ランキングも変わるはずなのですが、そうなってはいません。それゆえ、このランキングを採用などに活用しようとしても、日本企業にはあまり効果的でないものになってしまうのです。
仮に評価項目やその得点が同じでも、重み付けだけでランキングは変わるという問題もあります。例えば、新規事業の候補にA、B、Cの3つの案件があったとします。そして評価項目は①「想定されるNPV(生み出すキャッシュフローの現在価値の総和)」と②「CSRへの貢献」に割り切り、それぞれを10点満点で評価して各案件の順位付けをしようとしたとします。
こうした場合でも、①と②の評価項目の重み付けのさじ加減次第で、A、B、Cの順位付けをある程度恣意的に操作することができます。つまり自分に大きな発言権があれば、重み付けを変えることで、自分の一押しの案を通すことができるということです。
数字の捏造などの不正などをするまでもなく、評価項目とその重み付けを変えるだけで、ランキングというものはある程度作成者の好ましいように変えることができるのです。
「平均より下が6割」とは?
●平均の罠――平均値は実体を表していない
「日本の世帯平均の平均所得は545万円」と聞いたら皆さんどのように思われるでしょうか?
この数字は実際の2016年(平成28年)のものです。東洋経済オンラインの読者は収入レベルの高い都市部の方が多いでしょうから、「まあそんなものかな」と思われるかもしれませんが、日本中の世帯の方がこの数字を聞くと、6割程度の人は「自分の世帯は平均以下なんだ」と思うはずです。実際、およそ6割の世帯は平均以下なのですから。
「平均より下が6割」と聞くと違和感があるかもしれません。例えば身長などでは、平均より下に6割の人間がいることはなく、上下50%に分かれるからです。
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