トラックのいすゞ、意外な「ドル箱事業」の実力 タイで戦略車種を8年ぶりにモデルチェンジ

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タイ・ゲートウェイ工場でのピックアップ製造風景。タイ・サムロン工場に続く製造拠点で、2工場で生産された車両は100カ国以上に輸出もされている(記者撮影)

そのD-MAXの最大販売地域がタイであり、いすゞにとっては、1国で全ピックアップ販売台数の5割近くを占める最重要マーケットだ。消費者への販売は、約300もの販売店を有する三菱商事傘下の現地法人(トリペッチいすゞセールス)が担っている。

ピックアップは開発・生産拠点はもタイにある。1974年から現地でピックアップ生産を始め、その累計生産台数はすでに400万台を超えた。現在、タイ東部の2工場(サムロン、ゲートウェイ)で生産しており、豪州や中近東、アフリカ、欧州など100以上の国々にもタイから輸出している。

足元ではタイの市場冷え込む

ただし、タイでの販売には逆風も吹いている。タイ国内の自動車全需は昨年、5年ぶりに100万台を突破したが、今年半ば以降は前年割れが続く。輸出産業を中心とするタイ経済の減速に加え、家計の債務増大を問題視した金融引き締め政策で自動車購入ローンが組みにくくなっているためだ。ピックアップもその影響を受け、8~9月は販売が大幅に落ち込んだ。

加えて、乗用車との競合も激しくなっている。トヨタの「ヤリス」、マツダの「デミオ」など、燃費のいい小型乗用車の人気が高まっており、とくにバンコク中心部などの都市部ではその傾向が顕著だ。10年前に比べて昨年のタイ自動車全需は約5割増えているが、大きく伸びたのは一般乗用車で、ピックアップ自体はほぼ頭打ちになっている。

そうした中で8年ぶりにフルモデルチェンジされたD-MAX。泰国いすゞの谷重社長は、「足元の市場環境はよくないが、新型D-MAXの出来には自信を持っている。今回の新型車で市場にインパクトを与え、販売を大きく伸ばしたい」と意気込む。

いすゞは昨年度スタートした中期経営計画の中で、ピックアップ事業の強靱化を謳い、2020年度に過去2番目の高水準となる39万台(2017年度比22%増)の販売目標を掲げる。かつて好調だったサウジアラビア、エジプトへの輸出が経済情勢悪化でピーク時より大幅に落ち込んでいるだけに、目標達成には主力のタイでさらなるシェア拡大が欠かせない。はたして、新型D-MAXがその強力な起爆剤となるか。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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