急反発の日経平均、持続性は疑問との見方も 高水準の空売りが、意外高を誘発
[東京 18日 ロイター] -意外感もあった日銀決定会合後の日本株急騰の背景には、高水準の空売りがあったとみられている。東証が公表している空売り比率は統計開始以来、最高水準に上昇しており、日銀が貸出支援制度の規模を2倍に拡充するとの決定をきっかけに短期筋が買い戻しを急いだという。
ただ、金融政策自体は現状維持であり、買い戻し一巡後の株高持続性には疑問も示されている。
最初は日本株売り
初動は株売りだった。日銀は昼休み時間中に金融政策の現状維持を決定。ヘッドラインが速報されると、日経平均先物に売り圧力が強まり、1分もかからずに上げ幅を100円縮めた。午前中には一部で指数連動型上場投資信託受益権(ETF)購入額の増額が期待されていたため、失望売りにつながったという。
ただ売りは一時的にとどまり、その後急速に切り返す展開となった。ヘッドラインが流れてから8分後には日経平均先物が発表前と同水準を回復。その後は先物主導で上げ足を速め、日経平均<.N225>は一時507円高まで駆け上がった。取引時間中では12日の直近高値1万4874円を上回り、約2週間半ぶりの1万4900円乗せとなった。その急騰ぶりに市場では「違和感がある」(大手証券トレーダー)との声も多い。
意外高の背景は高水準の空売りにあった。東証が公表している空売り比率の5日移動平均では、17日時点で33.71%と08年11月の統計開始以来、最高水準に上昇していた。欧米株が戻りを試すなかで日本株はまだ低水準に放置されていたこともあり、「日銀会合がきっかけになり、高水準の空売りが巻き戻されたようだ」(国内証券トレーダー)という。
先物のショートカバーも活発だった。日経平均先物の日中売買高が前日比で78%増の9万3991枚と急増した一方、東証1部の売買代金は前日比28%増の2兆4364億円にとどまっている。現物市場では「前日の米国市場が休場だったこともあり、後場に特段、買い注文が増えたわけではない」(米系証券の現物トレーダー)との声が出ている。
日本株買いのきっかけは、日銀が本日決定した貸出支援制度の拡充と指摘されている。日銀は「成長基盤強化支援」の総額をこれまでの3.5兆円から7兆円に倍増し、金融機関ごとの資金供給の上限をこれまでの1500億円から1兆円に大幅に引き上げた。
ただ、日銀が開示している成長支援供給資金の実行先は、環境・エネルギー事業や医療・介護・健康関連事業などがメイン。18日午後の市場で株価の上昇率が高かったメガバンクやノンバンク、不動産株とは直接は結び付けにくい。一方、業種別で値上がり率トップとなった銀行業の空売り比率(5日移動平均)は39.40%(17日時点)と高水準だった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は「決定会合の中身はほぼ『ゼロ回答』に等しく、冷静に考えてみれば日経平均が大幅に上昇する根拠としては非常に薄弱」と指摘。「トレンドを変えるような材料になるとは到底思えない内容で、持続性となると疑問も生じる」との見方を示している。
(杉山容俊 編集:伊賀大記)
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