都市高速道路の渋滞は、「渡り線」で解消するか 莫大な費用をかけずとも、利便性向上を狙う

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首都高速のホームページのFAQには、「都市環状線を一方通行にできませんか?」という質問があるが、会社側は「一方通行にすることにより都心環状線の平均的な走行距離が現状に比べて長くなり、全体として走行台数が増し、依然として交通容量を超過するため、渋滞状況改善の効果は望めません」という回答が掲載されている。

これだけ渋滞が慢性化している首都高では、今さら一方通行にしてもより車が環状線に溜まってしまうデメリットの大きさを挙げている。

首都高でも新たな渡り線で利便性向上

この首都高速道路でも、千葉方面と都心を結ぶ7号小松川線と中央環状線C2の交差部分に新たに小松川JCTを設け、千葉方面と埼玉の川口・浦和方面との間を都心部を通らずに行き来できるようなる工事が間もなく完成し、12月1日に開通すると先ごろ発表された。

小松川JCTの詳細図(画像:首都高速道路HPより引用)

これまで千葉方面から7号線を使って中央環状線をまたぐたびに、ここからこの環状線に入って小菅や板橋方面に行けたら箱崎周辺の渋滞を回避できるのにと思ったことは数知れず、この開通はC1周辺の渋滞の緩和の一助となることが期待されている。あわせて小松川からC2の埼玉方面への入り口も整備されるため、江戸川区から埼玉方面へのアクセスの改善にもつながると考えられる。

同年度内には、東名高速道路と接続する首都高速渋谷線の下り線に、新たな入口である渋谷入口の設置も発表されている。3号線の東名方面は谷町ジャンクションから東名と接続する用賀まで、入り口はこれまで池尻1カ所しかなかったため、六本木から渋谷付近までの車は池尻を目指すしかなく、246号線や渋谷駅周辺の混雑に拍車をかけていた。

このように莫大な経費をかけて新規に高速道路を建設しなくても、交差する道路間を行き来できるようにしたり、新たな出入り口を整備することで、利便性の向上が期待されるのはありがたいことではある。だが、これまでも全体としては渋滞の緩和などにつながるものの、特定の区間の交通量が増えて新たに思わぬ渋滞を引き起こすことがあった。開通後、当初の期待通りの効果が表れるのか、それとも想定外の混雑等が起きたりしないのか、十分な検証が求められる。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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