話題の「女子マンガ」が描き出す女性たちの葛藤 漫画家・鳥飼茜さんと小田真琴さんが語る

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小田:僕もそれは感じてます。

鳥飼:私が焦ったのは、自分の結婚の形が思った以上に自由だったから。ほぼ別居婚で相手も私も自由に生きてるし、相手をどれくらい信頼するかも、要求するかも全部自由。

その結果、相手が怒ったり、私が不機嫌になったりする責任、放っておかれる孤独は、全部セット。これは結婚だけじゃなく、誰かと過ごすのってそういうことなんだと思う。

小田ひとりよりも孤独。

鳥飼:とりあえず結婚したい人が多いのは、きっと自由に限界を感じているから。誰か気に入った人と一緒に住んで、ごはんを作って子どももつくってというセットが欲しいんだなぁって。

結婚がいいっていう人も、結婚なんてするもんじゃねぇっていう人も、どっちも正解なんだと思う。

小田:鳥飼さんの結婚は?

鳥飼まあ、合格点かなぁ。最近、自分の持ち物に文句を言うのはやめようって思っているんです。また変わるかもしれないですけど。

ごく普通の女性の、のちの姿

――9月から連載が再開された安野モヨコさんの『ハッピー・マニア』の続編では、主人公の重田カヨコが離婚をつきつけられ、年齢も45歳に。

鳥飼:安野モヨコさんの『ハッピー・マニア』10代のころに読んで、しびれました。今もしびれていますけど。

小田:最近は主人公が年を重ねた作品も増えた。実際、読者も高齢化していますしね。

鳥飼:それはあると思います。老いって大事な話ですよね。

小田:親が病気になったとか、親が死んだとか。

入江喜和『たそがれたかこ』。45歳バツイチ・たかこの成長物語。

鳥飼まさに入江喜和さんの『たそがれたかこ』ですね。入江さんがやっていることって最先端だと思う。特別きれいなおばさんじゃなくて、ごく普通の女性の、のちの姿を描いていますよね。

かなわないこともあって、やりたいこともあって、だけど身体が追いつかないっていう現実。それがいちばんロック。

小田:入江先生しか描けない作品ですよね。

鳥飼:何に吠えればいいかをちゃんとわかってる。

小田:鳥飼さんの作品は、ファンタジーものとか男性が主人公のものもあって、きっとお描きになりたいものがたくさんあるんだろうなぁと思うんですが、今後は何を?

鳥飼:この数年間、何度か(『行け! 稲中卓球部』の作者)古谷実さんに「鳥飼さんギャグ漫画やりなよ」って言われてまして。

最初はそういう冗談かと思って流していたのが、よくよく聞いてみると大人のコメディーがいいんじゃないかって結構、私もなるほどと思ってしまった。あと、本当はホラーもやりたい。

小田ギャグとホラーは両立できますよ。楳図かずお先生とか、伊藤潤二先生とか。

鳥飼:まぁ、それは先々のことで、連載中の『サターンリターン』では女の人生をちゃんと描いていこうと思っていますので。女子マンガの席は空けておいてください(笑)。

小田:もちろんです!

(取材・文/熊谷あづさ)

■PROFILE
鳥飼茜(とりかい・あかね)/1981年大阪生まれ。2004年デビュー。現在、『サターンリターン』(ビッグコミックスピリッツ)、『ロマンス暴風域』(週刊SPA!)などを連載中。ほかに『おはようおかえり』『おんなのいえ』『先生の白い嘘』『地獄のガールフレンド』など作品多数。
小田真琴(おだ・まこと)/女子マンガ研究家。『FRaU』、『SPUR』、『ダ・ヴィンチ』、『婦人画報』などで女子マンガについて執筆。2017年『マツコの知らない世界』(TBS)に出演。自宅の6畳間の本棚14棹の8割は少女マンガ。お菓子をこよなく愛する編集者の顔も持つ。
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