「人生の最期」の7日間に起きる知られざる現象 名医が教える「ご臨終」の不思議な世界

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人がターミナルステージ(末期)の状態に近づくと、中治り現象のほかにもう1つ不思議なことが起こります。それが「お迎え現象」です。

(絵:カワグチニラコ)

急に患者さんの口から「娘が来た」「孫を見た」などという言葉が聞かれるようになったりする。そのたびに病棟スタッフは、顔をのぞき込んで「夢でも見てたの?」と声をかけますが、いきなり体を起こし、「今、そこの入り口で娘と孫が手を振っていた」などと言うことがあるのです。

そんな光景を見てスタッフは、「そろそろ親族に患者さんの死期が近づいていることを知らせなければ」と顔を曇らせます。

こうした現象は、不思議で非現実な出来事なのですが、「娘が見舞いに来た」「孫が手を握ってくれた」などとうれしそうな表情を見ていると、これは天国への旅立ちを控えた患者さんへの神様の粋な計らいなのかもしれない、と思うことさえあります。

「幻覚」と「幻聴」

ベッドで静かな療養生活を送っていた患者さんが、ある日を境に急に大声を出したり、奇声を発したりするケースもあります。これも「お迎え現象」の1つと思われます。

『イラストでわかる ご臨終の不思議な世界』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

なぜ、そのようになるのか。私たち医師は、おそらく「幻覚」や「幻聴」が患者さんを襲っているのだと想像しています。体が弱り、多臓器不全の状態になると、脳にも大きなダメージが加わります。脳が正常に働けなくなると、幻覚や幻聴といった症状が現れることがあり、それが患者さん本人を驚かせ、その恐怖から声をあげているに違いないのです。

以上、臨終間際の人によく見られる不思議な現象から、彼らの心身にいったい何が起こっているのかについて、医療の見地に立ってお伝えしましたが、「死にゆく人の心に何が起きているのか」をざっと把握していれば、その人に対するいたわりの気持ちもより一層高まるのではと思います。

「死」というものは、誰でも決して避けては通れません。でも、単に恐れを抱くべきものではありませんし、自分の家族、ひいては自分自身の「死」に向き合うときの知恵として、今回お伝えしたことを覚えておいていただければと思います。

志賀 貢 医学博士、臨床医

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しが みつぐ / Mitsugu Shiga

1935年、北海道生まれ。医学博士。昭和大学医学部、同大学院博士課程修了後、臨床医として約50年にわたって診療を行う傍ら、文筆活動においても『医者のないしょ話』(角川文庫)をはじめとする小説やエッセイなど著書多数。また、美空ひばり「美幌峠」「恋港」などの作詞も手掛け、北海道の屈斜路湖畔を望む美幌峠には歌碑が建立されている。

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