日テレ「続きはHuluで」に大失望する視聴者心理 高視聴率、ビジネス成立でもブランドにリスク

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視聴者は楽しんで見ていたドラマの最終話を「今まで楽しませてくれてありがとう」という気持ちで見るところがありますが、放送直後にポジティブなサプライズをもらったことで、その気持ちを倍増させました。

フジテレビにもFOD(フジテレビオンデマンド)という自社が運営する動画配信サービスがあり、やろうと思えば「続きはFODで」ができるはず。少なくとも、「監察医 朝顔」「ラジエーションハウス」の人気があれば、それなりの有料会員数を得ることができたでしょう。

しかし、フジテレビは月9ドラマの関連ドラマをFODで制作・配信することはありません。「純粋なFODオリジナルドラマを制作・配信し続ける」というストイックな姿勢を貫いているのです。その理由には、制作体制などの社内事情、若手育成などの方針、地上波とFODのマーケットはさほどかぶらないなど、いくつかの理由があるようですが、視聴者の感情を翻弄するようなところは一切ありません。

「無料のものは無料で完結させる」という一見、普通のことがなかなかできないのがビジネスシーンであり、人気作だからこそ「お金を稼げる」という欲が出るのは当然でしょう。ただ、日本テレビとHuluの戦略は、「局やドラマ枠の信頼を失ってしまう」というブランディングでのマイナス要素のほうがはるかに大きいのではないでしょうか。

放送前から疑念を持たれる「日曜ドラマ」

「視聴率争いでトップに君臨する日本テレビだから、“今”の結果にこだわりすぎてしまう」「視聴率争いで苦戦が続くフジテレビだから、視聴者ファーストという原点に戻りやすい」という置かれた立場の差こそありますが、今回の批判と称賛は少なからず今後に何らかの影響を及ぼしていくでしょう。

そこで気になるのが、日本テレビ「日曜ドラマ」の新作。10月スタートの「ニッポンノワール –刑事Yの反乱-」は謎を散りばめたミステリーですが、前述した「3年A組」と同じスタッフで制作されるため、放送前の段階から「また最終話の直後に『続きはHuluで』にされるのではないか」という疑念を持たれているのです。

これまでの作品を振り返ると、日本テレビの「日曜ドラマ」は他局の他枠と比べると、原作なしのオリジナルが多いなど、制作サイドが面白いものを作るべく努力を重ねていることは間違いありません。しかし、決して少なくない人々が放送前から疑念を持っている現状は明らかに黄色信号であり、皮肉にも「ニッポンノワール」が面白く、盛り上がるほど、「続きはHuluで」が許されないムードが醸成されていくでしょう。

日本テレビの日曜ドラマと、フジテレビの月9ドラマは、どちらも昨年から今年にかけて良作が多く視聴者の支持を集めてきただけに、それぞれ今後はどのような道をたどっていくのか。ビジネス的な視点で、その行方に注目してみてはいかがでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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