FRB、ECB、日銀の9月政策決定から先行きを占う 日銀は9月逃げ切りも再び追い込まれる
要するに、現状のFOMCでは2020年にかけて「利下げはあっても残り1回」という意見集約が進んでいる。今回の「保険的な利下げ」の効果もあって先行きは利上げ軌道に復帰できると考えているメンバーが半数近くにのぼる。今回の利下げは「あくまで貿易摩擦を中心とするリスクへの『保険』であって、本丸であるアメリカ経済は頑健である」という建前で行われているため、連続利下げは正当化できないということだろう。現に2名が利下げに反対票を投じた。
その一方で、長期的に望ましい政策金利(いわゆる中立金利)の水準は中央値こそ2.50%と前回から不変だが、その分布が明らかに下がっていることも見逃せない。具体的には3.25%が2名から1名へ、3.00%も2名から1名へ減少している一方、2.25%が0名から1名へ、2.00%も0名から1名へ増加している。
つまり、目先の利下げ回数については必要性を見込むメンバーが減っているものの、利上げ復帰後の着地点についてはより低い目線を持つメンバーが増えているということになる。したがって、今回のドットチャートをタカ派的と決めつけるのは必ずしも正しくない。
「QE再開」があっても、景気刺激のためではない
また、パウエル議長の会見もドットチャートの内容ほどタカ派色の強いものではなく、バランスを取りに行ったような印象を受けた。会見では下方リスクが明確になれば連続利下げに至ることも示唆され、資産購入を早期に再稼働させる可能性にも言及した。アメリカ経済を堅調とする一方、「世界景気は減速し続けている。私は7月の会合時より弱まったと思う」などと警戒を怠っていない。
ちなみに資産購入(QE)の再稼働は最近の短期金融市場の金利急騰を受けたテクニカルな措置というのが正確な理解に近い。報道されているように、FRBが想定した以上に短期金融市場の資金需要が逼迫しやすくなっている。これは、短期金利の上昇が始まる準備預金の水準が想定以上に高かったためであり、言い方を変えればバランスシートを縮小しすぎて金利が上振れてしまったことが問題化したものだ。
こうした状況に対し、今回会合では超過準備への付利(IOER)を1.80%へ、翌日物リバースレポ金利(ON RRP)を1.70%へ、それぞれ0.3%ポイントずつ引き下げることで、FRBを運用先として使うインセンティブを低くし、市中で取り引きされる流動性を拡大させ、短期金利を低く抑えることを図った。これらはひとえに「適正な所用準備の水準」が読みづらくなっていることへの対策であって、景気刺激を狙った利下げではない。
同様に、今後、仮にQE再開による流動性供給が決断されたとしても、それは景気刺激ではなく、あくまで「準備預金の水準を復元し、短期金利の落ち着きどころを探る」といったテクニカルな文脈で読み解くべきものである。
だが、仮に再開された場合はトランプ大統領のFRB批判や根強い緩和期待も相まって、「景気刺激策としてのQE」という「誤解」が支配的となり、アメリカの金利やドルの一段安を招く可能性が高いだろう。結果的に、それでトランプ政権の歓心が買えて、株式市場も喜ぶのであれば、FRBとしても悪い話ではない。
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