期待のMAZDA3は、なぜアメリカで売れないのか 今年4月に発売したが、販売計画に大幅未達

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近年マツダ車は、その流麗なデザインなどからモータージャーナリストだけでなく、ライバルメーカーからも高く評価されている。MAZDA3も前評判は高かったが、アメリカでの販売成績が芳しくない。4月は新車発売となったにもかかわらず、販売台数は4351台と前年同月比8%減少。8月も4825台(前年同月比13%減)となっている。

アメリカでセダンの人気が落ちているという逆風に加え、不振を招いているのはマツダの価格戦略の失敗だ。

MAZDA3はセダンタイプが2万1000ドルからに設定され、1万9000ドルがスタート価格だった旧モデルに比べて1割強値上げした。さらにMAZDA3に対するインセンティブ(値引き原資となる販売奨励金)は、発売月の4月に1613ドルに引き下げている(3月は1台当たり2487ドル)。

一般に、新車投入時のインセンティブをモデル末期よりも引き下げることは不思議ではない。しかし、5月以降もMAZDA3の販売台数が低迷しているにもかかわらず、インセンティブを抑え続けている。アメリカの調査会社・Autodataによると、今年4~6月のアメリカにおけるMAZDA3の累計販売台数は1万3300台と、会社の販売計画を約3000台下回る。

アメリカ向けにMAZDA3を生産しているメキシコ工場の稼働率低迷も深刻だ。メキシコ工場の今年1~7月の生産実績は前年比48%減の5万台で、稼働率は30%台まで落ちており、北米事業の赤字を招いている。さらにアメリカ向けの輸出比率が高い国内工場でも7~9月に1万台規模の生産調整を行っているという。

インセンティブ依存に弊害

もともとマツダはほかの日系メーカーに比べても販売力、商品力が弱く、値引きに頼った販売を行っていた。アメリカの販売店は、マツダ以外のメーカーの車を扱う併売店も多い。そうした併売店にマツダ車を売ってもらうために、多額のインセンティブを必要としていた。

アメリカにあるマツダの販売店(写真:マツダ)

ただ、過度にインセンティブに依存した販売は、メーカーの利益を削ることになる。また、中古車価格の下落にもつながり、長い目で見れば消費者にとっても副作用が大きい。結果として、ブランド毀損にもつながる。

そうした弊害を認識していても、インセンティブを抑制して販売台数が減れば、工場の稼働率が悪化する。固定費もまかなえなくなるため、一度はまると抜けるのが難しいのが現実だ。

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