ホンダ「CR-V」の失速が映す国内販売の深刻問題 SUVブームなのに古いミニバンより売れてない

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ホンダの日本事業を仕切る寺谷公良日本本部長兼執行役員は、「CR-Vはシビック同様、ブランドを牽引する役割を担い、当初から数を出すことは想定していない。先進機能や内外装のつくりを考えると、価格相応に仕上がっているが、300万円を予算の上限とするお客様も多く、競争が熾烈な中で状況は厳しい」と分析する。

商品競争力以上に弱点といえるのが、中高価格帯の乗用車カテゴリーにおける販売力とブランド力の低下だ。

トヨタは、全価格帯に多種多様なラインナップを展開し、客層も広い。高級車ブランドのレクサスを除いたトヨタブランドだけでもSUVは「C-HR」「RAV4」「ハリアー」「ランドクルーザー」など幅広く、RAV4は「C-HR」と「ハリアー」の間を埋める役割も果たしている。

一方、今のホンダには300万円以上の商品が売りにくい構造がある。低価格帯の車種に販売が偏っているのが主因だ。とくに近年、軽自動車ブランドのNシリーズが大ヒットしている。主力の「N-BOX」は、ブランド通称名別販売で5年連続の1位を獲得。販売店としても、商品力が高いことはもちろん、他の車種と比べて価格が安いうえ、税金などの維持費も安くすむため、セールストークをしやすい。

そのNシリーズは昨年、約37万台を売り上げた。これはホンダの全新車販売74万台の約50%を占める。それ以外でも2019年上期(1~6月)に最も売れたホンダの登録車は、2016年に発売したコンパクトミニバン「フリード」。小型SUV「ヴェゼル」も、CR-Vで取りこぼした客層の受け皿ともなっており、同セグメントでは上期で1位を獲得。いずれも比較的小型・低価格のモデルとなっている。

世間のブランドイメージが追いついていない

意図したわけではないだろうが、結果的にホンダの国内販売と客層は時間をかけて軽自動車やコンパクトカーへの傾注を強めてきた。顧客数が増え若返りを遂げるなど、ポテンシャルは広がったかもしれないが、200万円を切る軽自動車や300万円に満たないコンパクトカーの購入層を、CR-Vのような中高価格帯の乗用車へと誘導することは容易ではない。

そしてホンダが直面しているのは、「軽自動車やコンパクトカーには強いが、中高価格帯の車種は印象が薄い」というブランドイメージ。昨年、続々と登場したCR-Vやハイブリッドセダン「インサイト」、高級セダン「クラリティPHEV」などの新型車の貢献が薄いのは、いずれも世間のブランドイメージが追いついていない証左といえるだろう。

ホンダの日本事業を仕切る寺谷公良日本本部長兼執行役員(撮影:尾形文繁)

「N-BOXの満足度が非常に高く、一度乗るとずっと乗り続けてしまう。次の車でさらなる価値をどう提供していくかが、これからの課題だ」(寺谷氏)

世界でヒットするSUVや、クロスオーバー系車両の投入を検討する一方、今ある22車種のラインナップは、販売・開発の効率化のためにも整理していくという。

マザーマーケットでのブランド力復活やSUVブームの需要を取り込むために、CR-Vは日本に戻ってきた。しかし、そのために打った布石は客層の変化やホンダのブランド力低下が進行していることを、くしくも浮き彫りにする結果となってしまっている。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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