東急田園都市線の混雑は「分社化」で解消するか 沿線就業人口減るが、抜本的な対策は必要だ

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多摩田園都市では、MaaSなどの新しい交通サービスに取り組んでいくことで、ほかの地域よりも早く進む高齢化という課題に対応していくが、「南町田(グランベリーパーク)に匹敵する大型の再開発計画はもうない」と高橋社長は話す。町田市など沿線の自治体は住み替えによる若年人口の維持に取り組むが、多数のファミリー世帯の移住につながるような大型の再開発計画でもない限り、就業人口の減少という流れを食い止めるのは難しいだろう。

2030年にかけての就業人口4.2%減とは、田園都市線の混雑率にどの程度のインパクトをもたらすだろうか。単純に掛け算してみると、混雑率は182%から174%へと低下することになる。中央林間から溝の口にかけての混雑率は、ゆっくりと下がることになりそうだ。

渋谷―二子玉川間は、東急側も「人口増加率が高く、クリエーティブ層が集積する」としており、実際、現在もマンション建設が進む。同区間の利用者はさらに増える可能性もあり、混雑率を算出する池尻大橋―渋谷間は、相変わらず混雑した状態が続くかもしれない。

分社化で混雑対策も加速を

東急は田園都市線の混雑解消策として、渋谷駅ホームの増設による運行本数拡大の検討を始めている。高橋社長は「当社だけでできる話ではない。地域と協力して進めることが必要だし、多額の費用もかかるのですべて自前ではできない」と、昨年9月の取材時(2018年9月10日付記事「東急社長が語る田園都市線混雑解消の『秘策』」)に語っているとおり、実現に向けて越えるハードルは多い。抜本的な解決にはこうした大がかりな対策が必要だ。

長期経営構想では2050年の未来として「世界が憧れる街づくり」を実現するとしている。満員電車の通勤を世界が憧れるとは到底思えない。長期経営構想には「安全・安心・混雑緩和などの快適性を追求する」という方針が記載されている。しかし、その具体的な方法については言及されていない。分社化により、スピーディーに経営ができるようになった東急電鉄には混雑緩和策にも果敢に取り組んでもらいたい。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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