横浜に本社移転の京急、「カジノ」にはどう対応? 品川に加え、みなとみらいでも不動産開発

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当時の京急は「スピード感を持って参画に向けた準備を進める」「大規模な街づくりの機会ととらえ、多角的な参画を検討中」とIRに前向きな姿勢を見せていた。

だがその後、IR誘致に向けた市の姿勢がトーンダウンし、京急のIRに関する情報発信も影を潜め、市の方針がはっきりしてあらためて検討するという方針に転換した。今回の市の正式表明に伴い、京急がIRに対してどう発言するかが注目された。

竣工記念式典で取材に答える京急電鉄の原田一之社長(記者撮影)

「(本社移転に関する質問なので)IRに関する質問はなしにしていただきたいなと思っていましたが」と、原田社長は苦笑いしつつも答えてくれた。「三浦半島に元気がない中で、横浜は元気であるということが非常に重要。どのような施設になるかは別として、横浜にいろいろな人が集まり、働く場所ができるのであれば、それがよい施設になればいいなと思っています」。

ストレートにIRに言及しているわけではなく、以前のように積極的な発言ではなかったものの、歓迎の意思表示であるといってよいだろう。

横浜にどう貢献できるか

京急がIR施設の運営事業に参画するかどうかは現時点では定かではないが、横浜がIRを誘致できれば、名古屋や大阪からリニアで品川にやってきた客や世界中から空路でやってきた客が羽田から京急の電車に乗って横浜を訪れる。

9月2日に新本社ビルで開かれた竣工記念式典(記者撮影)

IR施設が多くの雇用を生めば、京急線の通勤利用も増える。黙っていても通勤客、観光客の両面で運賃収入の増加も見込めることは間違いない。

京急グループ本社ビルにはグループのうち11社が入居し、9月中旬から10月下旬にかけて引っ越しする。今後はグループの約1200人の社員がここで働くことになる。窓の外には横浜の青い海が広がり、建物から一歩外に出れば、心地よい浜風を肌で感じることができる。横浜の地で横浜の一員として仕事をすることによって、京急が横浜にどのような貢献をできるかという将来像はより具体的なものになるだろう。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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