英ジョンソン首相の暴走を議会は止められるか EUからの「合意なき離脱」阻止へ最後の攻防
英国ではEU(欧州連合)からの離脱期限直前に議会を閉会するというジョンソン首相の提案を受け、向こう1週間が「合意なき離脱」を回避できるかの重要な分岐点となりそうだ。
首相交代直後に夏季休会入りした議会は9月3日に再開した後、党大会実施の休会時期に合わせて来週10日頃に閉会する。新たな会期は10月14日の女王演説で始まり、直後の17-18日の欧州首脳会議が離脱協定見直しの事実上の合意期限、31日の正式な離脱期限までに残された審議時間はほとんどない。
離脱期限直前の議会閉会に反発の声も高まっているが、会期末と次の会期までの議会閉会自体は合法で、異議申し立てが認められる可能性は低い。議会閉会の承認は女王が行うが、政治的な中立性を保つため、承認を拒否しなかった。
英国が10月末の合意なき離脱を回避するためには、離脱期限までに合意内容の受け入れ是非を問う下院採決を行って、上下両院で離脱関連法案を可決するか、改めて離脱期限を延長して、EU側が全会一致でそれを受け入れるか、しなければならない。
あくまでも「10月31日離脱」のジョンソン首相
8月下旬の先進7カ国(G7)首脳会議の場でドイツのメルケル首相と面会したジョンソン首相は、30日以内に合意の障害となっている北アイルランド国境管理のバックストップ(移行期間中に最終的な解決策で合意できない場合、英国全体が一時的にEUの関税同盟にとどまる)の代替案を検討することを約束した。バックストップの撤回や見直しでEUと合意したうえで、10月末の合意期限までに必要な議会手続きを終えることを目指している。
だが、EUの首席交渉官を務めるバルニエ氏は1日付けの英テレグラフ紙に寄稿し、バックストップがEU側としての最大限の譲歩であることを示唆した。離脱合意の見直しは容易でない。
ジョンソン首相はEU側との合意内容の見直しが実現できない場合も、10月末にEUを離脱することを明言している。合意なき離脱の準備作業を担当する閣僚ポストを設置し、合意なき離脱時の混乱を緩和するための準備作業の加速や必要な財政措置を進めている。
議会の多数意見は合意なき離脱を回避すべきというものだが、離脱期限の再延長を求める権限は政府が持ち、議会に決定権はない。合意の有無を問わず10月末の離脱実現を目指す首相を議会が何らかの方法で止められるかが、合意なき離脱の行方を左右する。
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