トランプ対中関税第4弾で1ドル=100円割れへ 緩やかだが円高、ユーロ沈没、元は底割れ
そもそも7月利下げの理由が「貿易政策の不透明感に端を発するダウンサイドリスク」だったことを思えば、利下げが「保険的なもの」で終わる保証はどこにもなかった。トランプ大統領と完璧に意思疎通できる間柄ならまだしも、今や2人の関係はお世辞にも円滑とは言えない。水物である「政治」を理由に利下げしたのに「保険的」という根拠のない強弁をしてしまったことが7月会見の最大の敗因と言える。
今後、関税が本当に30%まで引き上げられるのであれば「貿易政策の不透明感に端を発するダウンサイドリスク」はリスクを超えて実体経済を本格的に毀損するレベルに入ってくる可能性もある。それを実感する頃には「保険的な対応」ではなく「堂々たる利下げ局面」に入っているであろうし、アメリカの金利もドルも一段と切り下がっている公算が大きい。
人民元は対ドルで次々と節目を割り込む恐れ
もう一方の当事者である中国からも目が離せない。具体的には人民元相場を注視したい。過去にも論じているテーマだが、対米輸入額が限定されている以上、中国が取るべき戦術は追加関税だけでは不十分で「通貨安による関税相殺」も必要になる。理論的には「5%ポイントの関税上積み」は「5%ポイントの通貨安」で相殺できる。
金融市場ではアメリカの金利、株、ドルの値動きに応じて他の資産市場のセンチメントも規定されてくる印象が強いが、最近ではこのほかに人民元の水準も取引材料として注視される傾向にある。過去の東洋経済オンラインへの寄稿『為替操作国認定でチャイナショック再来の衝撃』でも示したが、米中貿易戦争で緊張感の高まるイベントがあった時に元安傾向に弾みがついてきたという経緯がある。
現状のムードが続けば、ドル元相場は今後下落を続け、1ドル=7.5元、8.0元と次々に節目を割り込んでくる可能性もある。8月18日の日本経済新聞は需給に委ねていれば10元を割り込んでいた可能性もあったとの試算を紹介している。中国がもはや往時の経常黒字水準を保てなくなっている以上、このような声は今後、増えてきても不思議ではない。今回の関税引き上げを受けて、人民元相場がどういった動き方をしてくるかは他の資産市場にとっても大いに重要な話だ。
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