真夏の政争劇「埼玉県知事選」の奇々怪々 与野党一騎打ちでも盛り上がり欠く展開に

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そもそも、退任表明した上田氏は今年の5月連休明けまでは5期目に挑戦するとみられていた。上田氏は昨年4月に念願の全国知事会長となり、他県の知事も「当然、5選を狙うはず」と受け止めていた。

しかし、16年ぶりの県政奪還を目指す自民が、元プロ野球選手でスポーツライターとしてテレビ出演も多い有名人の青島氏を擁立。上田氏に対する多選批判の厳しさもあって、6月になって退任を正式表明した。

ただ、今回知事選には行田邦子前参院議員も出馬の意思を示していた。7月参院選の改選組だった行田氏は、年初から「国会議員は辞めて埼玉のために働きたい」と知事選出馬の準備を進めてきた。行田氏は2007年参院選で当時の民主党から出馬、初当選し、参院議員2期。政治家としては民主党→みんなの党→希望の党などを渡り歩き、今年6月までは希望の党幹事長も務めた。こうした政治経歴から同じ旧民主党出身の大野氏と支持層が重なるとみられていた。

行田氏は予想外の「青島氏支持」宣言

行田氏は6月に正式に出馬表明して選挙準備を進めてきたが、8月6日に熱中症の疑いで緊急入院し、翌7日に立候補断念を決めた。告示日前日の突然の断念に、中央政界でも「大野氏を支援する上田氏からの働きかけによる断念では」(自民選対)という噂が広がった。

これに対し、行田氏は選挙戦中盤の8月16日夜になって、自身のフェイスブックに病室で撮ったとみられるメッセージ動画を掲載し、まず「病状を押してでも立候補したかったが、選挙戦を戦える状況にないと判断せざるをえなかった。痛恨の極み」と沈痛な表情で語る一方、「上田知事との裏取引を噂され、驚いている。心外だ」と取引説を否定。そのうえで「私自身の県政運営のスタンスと最も近いので、青島健太氏に投票する」と青島氏支持を表明した。

行田氏は希望の党幹事長になった段階から、自民も含む保守層からの支持を期待して知事選出馬の準備を進めていたとされるが、この「青島氏支持宣言」には「予想外の事態。これにも何か裏があるのでは」(共産党幹部)との声があがった。

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