「バーニーズ」潰したアメリカ消費の劇的変化

そもそも富裕層狙いなんかではなかった

女性向け衣料品店としてチェルシーにオープンしたバーニーズも、1990年代はエネルギーにあふれていた。大きなイノベーションを起こしただけでなく、バーニーズは女性らしさに対してまったく新しい概念を示した。バーニーズの服は裕福な男性に支えられている女性に向けたものでも、自らの野心に潰される女性に向けたものでもなかった。

キャリアをスタートしたばかりの若いジャーナリストだった私は、セールに遭遇すればバーニーズで買い物をし、お財布の具合によって時々、ディーン&デルーカでアミガサタケや天然のサーモンを購入した。私と似た境遇だった人の中で、現在も同じように買い物をしている人はいないだろう。

SACの頃は、ショッピングは社会経験だった

ニューヨークの生活費は、とてつもなく高騰している。だがそれ以上に、長年こうした店に顧客基盤を提供していたクリエイティブ業界が、今は一貫性ではなく不確実性を生み出している。

同時に、インターネットが欲求を変えた。インフルエンサーが台頭するカルチャーが、非凡さへの憧れを弱めている。何でも手に入れることができる人たちは、誰も持っていないものではなく、インスタグラムでみんなが欲しがっているものに心を動かされる。

バーニーズが最初に社会の注目を大きく集めたのは、HBOの伝説的なテレビドラマシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ(SAC)」の影響だった。主人公のライターが身に着けていたのは美しくてちょっと変わっている高級な服で、それは純粋に彼女自身が欲しいものだった。

ドラマが人気絶頂だった頃はまだ、ショッピングは社会的経験であるという19世紀の百貨店の概念に由来するその思想を理解することができた。ショッピングは友だちと行き、また、人を観察するために行った。なぜなら、そこにいる人たちは興味深かったからだ。

それから約10年後に誕生するiPhoneで絶えず調べるのではなく、想像を巡らせた。そこで見かける人々のストーリーを頭に描くのだ。何の仕事をしているのか、そのパンツをはいてどこに行くのか、その服やブーツを身に着け、口紅を塗って何をするのか、誰を愛し、誰に愛されているのか。

最近はバーニーズに行くと、そうしたストーリーは簡単にできてしまう。私はさっさと動き、目的がはっきりしていて、周りにいるのは欲望を満たすというよりむなしさを埋めているような女性たち。私の目に映るのは、お金と喪失だけだ。

(C) 2019 The New York Times News Services 

(執筆:Ginia Bellafante、翻訳:中丸碧)

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