日ハム球場移転、JR北は「新駅」をなぜ渋るのか 集客には不可欠だが、輸送能力は「もう限界」

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JR北海道広報部は「今年度、ボールパーク新駅に関する調査を実施し、年内に一定の調査結果を北広島市・球団・BP会社に提示する予定としている」と説明する。

過去の報道では、「本線」への支障を回避する策として、球場新駅を千歳線の「本線」から分岐する「引き込み線」方式とする案が取り沙汰されたこともあった。しかし、この方式では、新千歳空港駅への直通列車や函館・釧路方面の特急列車の新駅停車は不可能な構造となり、乗り換えを余儀なくされる可能性がある。これでは、せっかく新駅が設置されたとしても、道外からのアクセスは向上しない。

現状では、2面4線方式が検討中と報道されており、この方式が実現すれば「本線」への支障を回避できるだけなく、新千歳空港方面からも乗り換えなしで新駅へアクセスできるようになると考えられる。

ただしこのことについて、JR北海道は新駅設置の可否が決定されていないことを前提としつつ、「新駅が2面4線方式になるかは決めておらず、当社からそのような発表もしていない。観客輸送に必要な設備がどのようなものになるか、今後検討を行い具体的な駅を決定していく」(同社広報部)とコメントしている。

集客に新駅設置が不可欠

ファイターズは野球場を核とした総合レジャー施設を北広島につくろうとしている。集客効果を高めるためには、新駅設置が不可欠だ。さらに、道内外からの観光客を誘致するために、新駅には特急列車や快速エアポートも停車させたいところだ。

また、新駅の商業施設とBPの相乗効果も期待できる。札幌在住のプロ野球ファンの間では、北広島への本拠地移転で、観戦に行きづらくなるとの声も聞かれる。そうした不安を払拭するためにも、新駅設置を実現したい。

たとえば、埼玉西武ライオンズの本拠地・メットライフドームは西武狭山線西武球場前駅の目の前にある。池袋から西武線で40~50分程度を要するものの、球場が駅の目の前にあることで、利便性を確保している。

ファイターズのBPの目の前にも駅ができれば、札幌市民をBPへ誘致する効果を高めることができる。JRとの球場新駅設置の協議を担当する北広島市の川村裕樹企画財政部長も「我々も新駅実現に向けてJRと協議を行っている。『JR北海道グループ中期経営計画2023』の中でも新駅の検討が初めて盛り込まれており、早期実現に向けて取り組みたい」との認識を示す。

関係者間で知恵を出し合い、BPと鉄道の相乗効果を高め、観光まちづくりの起爆剤とする新駅設置に向けた取り組みが求められる。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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