日ハム球場移転、JR北は「新駅」をなぜ渋るのか 集客には不可欠だが、輸送能力は「もう限界」

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観客の多くが鉄道でのアクセスを選択することが予想される一方、北広島駅とBPの間は約1.5kmの距離があり、徒歩20分程度を要する。

寒さが厳しい春先などは徒歩や北広島駅でのバス乗り換えを回避する観客が多く発生し、車での来場が増えることも想定される。しかし、計画する2本の道路のうち、国道274号線につながる道路についてはBP開業に間に合わないことが確定している。

鉄道による安定的な観客輸送を確保することは、道路渋滞緩和のためにも極めて重要なことは間違いない。鉄道による安定的な観客輸送の遂行には、新駅が不可欠となる。

JR北海道は慎重姿勢

しかし、これまでの報道によると、JR北海道の島田社長は「新駅をつくれば交通アクセスが解決するというわけではない」とも発言しているとされており、同社としては現在に至るまで新駅設置は未定の状況にある。

JR北海道が新駅設置を積極的に打ち出せないのには理由がある。その1つに、千歳線の輸送能力が飽和状態にあることが挙げられる。

千歳線は地域輸送のほか、新千歳空港への空港輸送、そして本州との間の貨物列車の通行ルートという大きな役割を担っている。「JR北海道グループ長期経営ビジョン 未来2031」によると、札幌駅―南千歳駅間の上下線では1時間当たり最大22本(うち、エアポート8本、普通7本、特急5本、貨物2本)が運行されており、過密状態にある。

そして、貨物列車が札幌貨物ターミナル駅と千歳線「本線」の間の平面交差を往来する間は旅客列車の通行ができなくなるため、さらなる旅客列車の増発は困難な状況にある。こうした過密ダイヤの中に、新たにプロ野球の観客輸送が加わることとなる。

もちろん、線路増設や車両新造などの投資をすれば千歳線の輸送力増強を図ることはできるが、経営難のJR北海道にとっては難しい。また採算性の観点からも年間60試合程度のプロ野球のために多額の投資の経営判断を下すことは困難を伴う。仮にそうした決断をする場合には、北海道の観光振興など総合的な政策判断が前提となるに違いない。

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