英国の落日、瓦解した”金融帝国”の夢 

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バッドバンクの設立は財政重荷で計画倒れに

BOEは1月19日、第2弾の金融安定化策を公表した。(1)金融機関が特定の保有資産に一定の保証料を払う代わりに、損失が膨らめば英財務省がその9割を保証するスキーム(APS)、(2)BOEが社債やCP、シンジケートローン、一部の資産担保証券(ABS)などの優良資産を約500億ポンド分買い取る制度(APF)、(3)ABSへの保証--。

今回は昨年10月の第1弾の対策(約370億ポンドの公的資金注入策)には盛り込まれなかった、不良債権問題への対策が含まれた点は意義深いが、実効性には市場から疑問の声が出ている。特に期待される(1)のAPSも、保証料がいくらになるかが不明。当初の不良資産買い取り専門機関「バッドバンク」の設立構想は、米国同様、財政負担が莫大になるため計画倒れに終わったからだ。

金融危機は実体経済の悪化にも及んでいる。市場の信用収縮による金融機関の貸し渋りが企業の投資意欲と雇用を減退させ、失業率上昇や消費を冷え込ます。有効需要が落ち込めば企業倒産も増え、信用収縮がさらに加速する。英国経済は負のスパイラルに陥っており、景気刺激策としては減税と公的資金を活用した一段の財政出動が不可欠。昨年12月には付加価値税(消費税)を17・5%から15%に時限的に引き下げた。

一連の施策の財源は英国債の増発で賄われる。JPモルガン・チェース銀行の試算によれば、09年の英国債発行額は1460億ポンドと前年比2・5倍に達する。英国の財政赤字の対GDP比は09年には8・8%と同2倍弱(08年は4・6%)に膨らむ見通しだ。世界的な国債増発ブームの中で、英国債の消化が進むとは考えにくい。

むしろ、英国債全体の3分の1を保有する外国人投資家が、長期金利上昇(額面価値下落)が続く中で、売却を膨らます可能性も高い。

最大の懸案はAAA格にある英国のソブリン格付けの引き下げだ。マーヴィン・キングBOE総裁は国債消化不安から非伝統的手段としての国債購入に言及しており、発行量だけではなく規律という質の面でも財政悪化が加速されそうだ。

市場関係者の間では英国債の格下げは世界金融にあまりにも影響が大きいため、想定しにくいとの見方もあるが、英国の「最後の砦」だった金融セクター(GDPの3割)が沈んだ今、格下げの可能性は非現実的ではない。さらなる財政悪化と金利低下局面でポンド下落が進めば、女王陛下の描かれたポンド紙幣を手放し、16カ国が加盟するユーロに、仲間入りをする選択肢さえも考えられる。現下のポンドは対ユーロ・ドル・円から見ても、独歩安に近い売られ方だ。

米著名投資家のジム・ロジャース氏が1月、「英国は金融がめちゃくちゃになった。北海油田も今後枯渇していく。英国には売りものがなく、投資できない」と、英国売りを表明した。1992年にポンド危機を引き起こしたのは、彼の同僚だったジョージ・ソロス氏だっただけに、ポンド売りを誘った。

唯一明るい材料といえば3年後のロンドン五輪。ただ、経済効果は210億ポンド(ロイズTSB試算)と、RBSの最終損失額にも満たない。70年代に経験した忌まわしき「英国病」再来の靴音が近づいている。

(鈴木雅幸、武政秀明 撮影:尾形文繁、今井康一 =週刊東洋経済)

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