レクサスが国内販売でベンツに勝てない理由 日本に根付かせるために必要な戦略とは?

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些細なことでも差別をしてはならず、その対象になれば憤りを感じるのは当然だ。レクサスのやり方には、一般の中古車を買ったユーザーを冷遇することで、認定中古車と新車のユーザーを相対的に持ち上げる醜い魂胆が透けて見える。

これはトヨタが決めて販売店が守っていることだが、店舗によっては、レクサスオーナーズラウンジとは別にキレイな部屋を設けていたりする。中古車のユーザーは、そこに通すわけだ。机上の「レクサス・マスト」に縛られながらも、工夫を凝らしている。レクサスは顧客と販売現場の目線で、もっと素直になるべきだ。

「トヨタのレクサス」を目指せ

先ごろ上海モーターショーに、上級ミニバンのレクサスLMが出品された。この国内の取り扱いについて販売店に尋ねると「レクサスLMは、トヨタのアルファード&ヴェルファイアをベースに開発されたミニバンだから、レクサスの独自性が乏しく日本では売らないらしい。しかし仮に販売すれば、従来とは違う新しいお客様をレクサスに招き入れられる」という。

レクサス初のミニバンLM(編集部撮影)

ミニバンは日本のユーザーが育てたカテゴリーだ。今でも国内需要は根強いから、ミニバンの新型車を発売するなら、日本から始めるのは当然だろう。

最近はクルマ造りを海外と共通化するグローバル化が活発だが、必要とされるクルマのあり方は、国や地域によって大きく異なる。販売する車種から足まわりなどのセッティング、車名に至るまで、国や地域に応じて最適化するのが本来のあり方だ。マツダアクセラは、車名を海外と同じマツダ3に変えたが、その必要はなかった。

特に日本におけるレクサスの立場は、海外とはまったく違う。海外のトヨタ車は、1973年のオイルショックをきっかけに、低燃費で価格が安く故障しにくいことをセールスポイントに売れ行きを伸ばした。そのためにトヨタのイメージは高級車に合わず、プレミアムブランドのレクサスが必要だった。

ところが日本のトヨタは、1955年に発売された高級セダンの初代クラウンから普及を開始した。今ではパッソからセンチュリーまでそろえる総合自動車メーカーだ。従って元々国内市場でレクサスは不要だったが、メルセデス・ベンツやBMWの販売増加にストップをかけるため、2005年に国内で営業開始した。この目的をいまだに果たせていない。

レクサスを日本に根付かせるなら、トヨタブランドと同様、日本の顧客に合った車種とサービスを充実させるべきだ。そうすればトヨタ車からメルセデス・ベンツやBMWに乗り替えるユーザー(この数は相当に多い)をレクサスへ誘導できる。グローバルなレクサスではなく、日本のユーザーの心に響く、トヨタのレクサスを目指すべきだ。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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