ルネサス鶴岡工場、ソニー買収後の先行き 収まるところに収まったが不透明要素も多い

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もともと鶴岡工場の生産能力は月産2万枚(12インチウエハ換算)だが、ソニーが鶴岡工場でCMOS生産を開始する2015年4月時点では、月産7000枚程度から始まる可能性がある。ソニーは2015年度までに鶴岡工場に275億円の設備投資を実施することを発表しているが、これも需要との兼ね合いになるだろう。

中長期的にはソニーグループ全体でCMOSの生産能力を現在の月6万枚から7.5万枚まで引き上げる方針だが、「鶴岡工場だけで月産1.5万枚まで生産を増やす予定はない」(ソニー広報)とのスタンス。鶴岡工場の生産能力のかなりの部分が余ってしまうが、これをどうするかは明らかにしていない。

東洋経済でたびたび取り上げたように、もともと鶴岡工場には独立ファウンドリー構想があった。地元経済界が一定比率を鶴岡工場に出資することで、ソニーが持て余すかもしれない生産ラインをファウンドリーが引き受けるという選択肢もある。そうなれば、ルネサスが生産終了を予定している半導体については、ブランドを変えて生産する道が残される。

富士通の工場売却も影響か

一方で、ソニーは別の流動的要素を抱えている。自社工場のほかに富士通の三重工場にCMOSの生産を委託しているが、委託先の富士通は三重工場の売却先を数年前から探している。台湾TSMCへの売却交渉は頓挫したものの、あきらめずに複数の海外メーカーと交渉を進めている最中だ。

「CMOSの技術を海外メーカーに流出させるわけにはいかない」(ソニー幹部)と強い危機感を持っており、仮に海外メーカーへの三重工場売却がまとまれば、ソニーが生産委託を取りやめることもありうる。すでに三重工場への次世代投資は止めており、スマホ向けなど競争力の高いCMOSはソニーの長崎工場で生産し、これを鶴岡工場にも展開していくことが可能になったためだ。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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