中国経済の矛盾が露呈し始めた バブルと景気後退の間で揺れるマクロ政策
人民元高容認
為替政策を金融政策の一環と位置付ける中国当局は、インフレ抑制を目指し、既に人民元相場の対ドル上昇を容認し始めた。
上海外為市場の人民元相場は、昨年2月の安値1ドル=6.2454元から、今月半ばに6.0406元まで、約3.3%上昇した。
「インフレ率は今後さらに上昇すると予想され、人民元の対ドル上昇のペースが速まり、預金準備率の引き上げと利上げも視野に入るとみられる」と、野村資本市場研究所のシニアフェロー・関志雄氏は予想する。「インフレ率の上昇、不動産価格の高騰、労働市場における賃金上昇を勘案すると、低成長であっても、景気はむしろ過熱していると認識すべきだろう」と同氏は言う。
関氏は、インフレ率が3.5%以内という政府の目標を超えてくると、明確に引き締めの方向性が打ち出されると予想する。
労働力不足
中国国家統計局が20日に発表した2013年国内総生産(GDP)成長率は、前年比7.7%増となった。リーマンショック後の平均潜在成長率は8.8%とされ、統計上、8四半期連続の低迷期にある。
前回の低迷期(2008年第4四半期―2009年第2四半期)との比較では、成長率に大差はない。しかし、CPI上昇率は前回が0.1%だったのに対し、今回は2.6%に上昇。さらに前回は住宅価格が下落していたが、今回は急騰している。
野村資本市場研究所の関氏は「中国では、生産年齢人口が減り始め、農村部における余剰労働力が枯渇した結果、労働力は過剰から不足に転換しており、潜在成長率は大幅に低下したと考えられる」と指摘。「景気過熱の現状から判断して、中国の潜在成長率は、すでに足元の実績値を下回る7%程度まで下がっているとみられる」との認識を示した。
潜在成長率が従来の8.8%(リーマン・ショック以降の成長率実績の平均値)であれば、7.7%という現在の成長率は景気の低迷を意味するが、潜在成長率が既に7%程度に低下しているとすれば、これはむしろ「好景気」を意味すると同氏は言う。
一方、中国の国家統計局は、2012年の中国の労働年齢人口(15―59歳)が初めて減少したと発表した。
求人倍率は前回の低迷期には、一時0.85まで低下したが、今回は一貫して1を上回り、労働市場は過熱気味となっている。
中国では今月末から旧正月の連休が始まるが、沿岸部工業地帯では例年よりも早く休暇に入る工場が目立っている。欧米を中心に受注が低迷していることや、労働者不足による賃金上昇などが理由だ。