中国経済の矛盾が露呈し始めた バブルと景気後退の間で揺れるマクロ政策
[東京 28日 ロイター] -中国経済の矛盾が露呈し始めている。景気低迷期にありながら都市部の不動産価格の騰勢は収まらず、二重の金利体系のもとシャドーバンキングのリスクが拡大している。
さらに労働力不足が潜在成長率に影を落とし始めた。シャドーバンキングの膨張抑止や投資依存からの脱却を狙って金融を引き締め方向にすれば、経済が急減速するリスクがある。他方、緩めるとシャドーバンキングの矛盾が拡大するリスクに直面するため、極めて微妙なマクロ政策のかじ取りを求められている。
中国インフレの現状
「日本ではモノが安い」──。このところ訪日した中国人ビジネスマンや観光客から、口々に出てくる感想だ。
中国国家統計局によれば、2013年の消費者物価指数(CPI)は前年比で2.6%上昇し、政府目標の3.5%以内に抑えることができている。
しかし、中国の実際のインフレ率が既に目標値を大幅に上回っていることは、騰勢が収まらない不動産市況やシャドーバンキングの急成長が如実に物語る。
標準住宅(70平方メートル)の販売価格は、家計の平均年収と比べて、北京が22.3倍、上海が15.9倍(共に2011年実績)となり、マイホーム実現の夢がますます遠のく庶民の間では、不満が高まっている。
二重の金利体系
矛盾は金利体系にも表れている。中国では二重の金利体系が存在する。金融機関の預金金利に代表される規制金利と、シャドーバンキングなどで提示される市場金利だ。
「シャドーバンキングが急拡大した原因は、規制のせいでインフレに追いつけない金融機関の預金金利に不満な資金の出し手(投資家)側と、投資し過ぎたために、高金利でもいいから借り換えをしないと過去の借金の償還ができない資金の取り手側のニーズがマッチしたためだ」と、中国ビジネスのコンサルタント・津上工作室の代表、津上俊哉氏は指摘する。
最近の中国では、年平均で物価が1割程度上昇しているというのが生活者の実感であり、「この期に及んで、マンションがまだ売れているのは、インフレによる目減りを嫌って、キャッシュを実物に換えておきたいニーズが、投資家の間にあるためだ」と同氏は言う。
北京や上海などの大都市では、足元の新築住宅販売価格は前年比で20%を上回る上昇を示している。