新興国発、リスク回避の動きは止まるのか もし金融システムに波及なら、別次元の危機に

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1月27日、中国やアルゼンチンなど新興国が発端となった市場のリスク回避は、金融システムに波及するかが焦点だ。写真は昨年10月、都内で撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 27日 ロイター] -中国やアルゼンチンなど新興国が発端となった市場のリスク回避は、金融システムに波及するかが焦点だ。

一部新興国の経済減速程度では先進国経済が堅調であれば不安はそう大きくならない。通貨安も経常赤字の縮小を促す効果があり、悪いことばかりではない。だが、それには時間も要する。欧米金融機関の想定外の損失などが明らかになり、金融システムに波及するような事態になれば、先進国も無傷ではいられない。

海外長期資金の押し目買いも

日経平均<.N225>は大台で踏みとどまった。週明け27日の市場では、一時400円を超える大幅続落となり、取引時間中としては昨年11月15日以来、約2カ月ぶりに一時1万5000円を下回ったが、終値では大台をギリギリ上回った。

プットの売り手などオプションの関係で1万5000円を割らせたくない投資家が多いことをうかがわせているが、現物の売買代金も2兆8502億円(東証1部)と膨らんでおり、下値で買いを入れる投資家も多かったことを示している。

市場では「新興国の株安と通貨安を背景としたグローバルマクロ系のヘッジファンドなどの売りに対し、為替などの短期的な動きをあまり気にしない海外年金など長期資金が押し目買いを入れた」(大手証券トレーダー)との指摘が出ている。

日米欧など先進国経済は依然堅調であり、「昨年末に広がった世界景気に対する過度な楽観論の修正」(IHS・シニアエコノミストの田口はるみ氏)と冷静な声もある。だが、新興国の株価や通貨は依然として不安定な動きを示しており、リスクオフの動きがさらに加速する可能性も大きい。

昨年5─6月にバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が量的緩和策の縮小を示唆し、株安・円高が進んだときは、日経平均は一時1万2415円、ドル円は一時93円台まで下落した(ともに6月13日)。商品先物取引委員会(CFTC)のデータでみた投機筋のリスクオン・ポジションの規模は昨年末、リーマンショック後の最高レベルまで積み上がっており、巻き戻しの動きが本格化すれば、株安・円高は現状レベルでは済まない。

グローバルな信用収縮への警戒

リスクオフの動きが加速するかどうかは、足元の新興国問題が金融システムに波及するかにかかっている。新興国の経済規模は大きくなっているが、今年の先進国経済は順調に成長する見通しであり、一部の新興国が多少、経済減速になっても世界経済に対する影響は軽微だ。

また、新興国の通貨安もデメリットばかりではない。1997─98年のアジア通貨危機は、為替の固定相場制で封じ込められていたゆがみが一気に噴出する形で、経済にダメージを与えた。だが、現在はほとんどの国で変更相場制を採用している。経常赤字などを背景にした通貨安は輸入物価の上昇を通じて内需を減速させ、輸出を促進させることで経常収支を改善させる「自動調整メカニズム」を有している。

ただ、新興国の通貨安や株安が、金融システムに波及すれば話は別だ。「先進国の金融機関が新興国への投資で大きな損益を生じさせたり、またこれまで公表されていなかった損失が明るみに出るなど金融システムに問題が波及すれば、資金の巻き戻しでは済まないリスクオフになる」(SMBC日興証券・シニアマーケットエコノミストの嶋津洋樹氏)という。

金融システムの問題に発展すれば、信用収縮が起き、新興国だけでなく、先進国にも大きな影響が及ぶおそれがある。グローバル化したマーケットの弱点だ。過度な楽観の反動ではあっても、楽観がマイナス側に動いたときの悪影響は小さくないのは、バブルの形成と崩壊における歴史が示している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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