国内メガバンク3グループ 余裕なく、薄氷踏む試練の年


不気味な静けさ--危機が先送りとなる懸念

08年暮れから09年新春にかけて、市場は奇妙な静けさに包まれている。企業倒産は不動産、建設業界から他業界へも広がり、大手企業の減産、リストラは連日発表されたにもかかわらず、株価は日経平均で8000~9000円の往来相場で、一段の底割れ状態とはならなかった。

インターバンク市場や、社債やCPなどの直接調達市場も、相変わらず機能不全のままであるにもかかわらず、これまでのところ、“日本発”の危機が起きていない。これは、10年前の金融危機で構築した仕組みと経験があったからだ。欧米と異なり、日本銀行による流動性供給も、銀行への公的資金注入の枠組みも制度上、手当てされており、復活は容易で、市場にひとまず安堵感を与えることができた。大手企業が資金不足に備えて、コミットメントラインを使い、追加融資を銀行に打診しまくる状態も、市場からは早めに手を打っているとみられた。

銀行株は軒並み純資産倍率1倍を割っているにもかかわらず、取り付け騒ぎも起きていない。「政府は銀行を潰すことはしない」という暗黙の了解があるからだろう。

だが、実態が変わっていない以上、危機は先送りされただけだ。

不気味な静けさ--。JPモルガン証券の笹島勝人シニアアナリストは「ちょうどいまは1999年の状況に似ている」とみる。「97~98年の危機を通じて、銀行に対するセーフティネットができて、一時的に金融危機にフタをすることができたが、実体経済の危機が進行し、01~02年にはクレジットクランチにより、大口債務企業の破綻が相次いだ」と当時を振り返る。

10年前は、今回同様に、98年にも30兆円の保証協会による保証枠が用意されたが、99年初には大幅に減少した倒産件数が、その後、再び上昇に転じた。

資金繰りと債務超過--企業倒産の理由はこのどちらかだが、言い換えれば、資金繰りを緩和すると同時に、債務超過にならない体質を企業側が備えていなければならない。

「貸し渋り対策」の掛け声の下、時価会計の緩和や、中小企業の条件緩和債権に関する債務者区分の見直しが進められたが、危機を先送りするだけの結果を招かないか。

一連の時価会計の見直しの中で、自己資本比率規制の弾力化が行われ、国内基準採用行に関するかぎり、有価証券の評価損は自己資本にカウントされないこととなった。地銀の多くにはプラスの影響が出る。

また、不良債権の扱いにしても、これまでの基準であれば、要注意先や要管理先だった企業に、正常先として対応することが可能となる。メガバンクの場合、「債務者区分上の目線は変わらない」(幹部)とみられるが、地銀では、緩和が進むことになるだろう。収益力が構造的に弱い企業の場合、追い貸しで資金が回るようになれば、延命されたとしても、いずれは債務超過に転落して、破綻するおそれがある。銀行側では、ある時期に一気に、破綻懸念先や破綻先が増える可能性がある。

10年前とは違う事情もある。メインバンク制が希薄になっていることだ。苦しいのは資本市場からの直接調達の比重を上げてきたノンバンクや商社ばかりではない。大口集中リスクの削減、そのためのシンジケート・ローンの活用などは全業種で着実に進んできた。財閥色の残る古参企業を除けば、銀行側にメインの意識がない企業がかなり多くなっている。これがまた、資金繰り倒産が発生しやすい土壌ともなる。

00~03年にかけて、度重なる不動産・ゼネコンの破綻・債権放棄、そごう、マイカルの破綻、商社再編、産業再生機構によるカネボウ、ダイエーなどの処理が行われたが、09~10年は再び、大手企業の命運が問題となる可能性が高い。今の日本企業は当時よりも厚い自己資本を保有しているという反論も聞かれる。だが、当時は、輸出企業が景気を牽引した。今回はトヨタですら営業赤字に転落するなど牽引役不在だ。

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