既成政党がおののく「れいわ新選組」の実力度 「永田町のアウトロー」山本太郎議員は当確か

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4月下旬にれいわ新選組を立ち上げたときも、令和フィーバーの最中だっただけに「安易な便乗商法」(自民幹部)などの批判が相次ぎ、「そのうち消える」(同)との見方が多かった。

しかし、旗揚げに合わせて立ち上げたホームページで「どこまで挑戦が可能か。集まる金額によって、候補者を擁立する規模を決めていきます」と寄付を求めると、山本氏の予想も超えるスピードで寄付金が集まり出した。「5月31日までに1億円集める」という目標は早々と達成し、7月4日の参院選公示日までには3億円の大台も見込める状況だという。

複数議席を獲得し、政党要件を満たす可能性も

寄付の内訳は1人1000円から10万円単位までバラバラだが、「7月1日現在で約2億2570万円が集まっている」(山本事務所)という。これについて選挙関係者は「自腹を切って寄付した人は必ず投票するし、周囲にも働きかけるため、現時点でも比例で数十万単位の基礎票が見込める」と指摘する。

だからこそ、山本氏は公認候補10人を各選挙区や比例に振り分け、自らが抜群の知名度を活かして全国遊説を展開すれば、「複数議席の獲得で政党要件を満たすことも可能」と読んだとされる。確かに、比例代表で100万票以上を集めれば1議席獲得は確実で、総投票数の2%以上という政党要件も満たす可能性が大きい。

もちろん、国政政党を目指す以上、欠かせないのが公約だ。山本氏が掲げる政策は「消費税廃止」「最低賃金1500円」「奨学金徳政令(返済を免除)」など、「現実味に乏しいものばかり」(立憲民主幹部)ではある。さらに、参院選でれいわに入る票は「ほとんどが主要野党から流れたもの」との見方も多い。となれば、山本氏の安倍政権打倒の狙いとは裏腹に野党結集を阻害することにもなりかねない。

それでも山本氏は「もし、われわれが数議席を獲得すれば、政治が変わるきっかけになる」と力説する。寄付した人の中には「何かを変えたいので、なけなしの金をはたいた」という若者も少なくないとされる。安倍政権の再登場からすでに6年半を超えるが、アベノミクスは一向に国民の懐を豊かにはせず、各種世論調査をみても「国民の閉塞感が充満している」(首相経験者)のも事実だ。ネット時代だけに、4割を超えるとされる無党派層が山本氏に関心を持つ可能性は十分にある。だからこそ、各政党の選挙担当者が山本氏の動きに神経をとがらせるのだ。

公認候補に名乗り出た安冨教授は「新選組はテロリストという意味で、政党のネーミングとしてはありえない」と苦笑しながら、山本氏のこれまでの政治活動は高く評価した。今回の山本氏の挑戦に、政界では「究極のポピュリズム」(首相経験者)との批判が渦巻くが、過去のにわかづくりの政治団体とは違う勢いが、各政党を怯えさせていることも事実だ。

7月21日の参院選投開票日の夜、山本氏が拳を突き上げて「永田町でのテロに成功した」とガッツポーズする場面がみられるかどうか。それが真夏の政治決戦の焦点の1つになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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