JR東、株主総会で出た「トラブル」の質問と回答 輸送障害の説明は質疑の前、「荒れず」に終了

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また、6月1日に起きた横浜の「シーサイドライン」の逆走事故が、JR東日本が進めている自動運転の開発に与える影響についても説明があった。

JR東日本では、昨年12月末から行った山手線の自動運転実験が大きな話題となった。現在は自動運転の実施方法について検討を行っている段階。会社側は「横浜シーサイドラインの事故原因には重大な関心を持っており、必要な措置を検討していく」という。

事前の説明が奏功したのか、事故や輸送障害に関する株主からの質問は、「人身事故はなぜ起きるのか」「技術継承はうまくいっているのか」という程度にとどまった。

駅係員のノウハウ継承に課題

一方で、「みどりの窓口」係員のスキル低下に関する質問が2人の株主から出された。1人目の株主は、勝田駅のみどりの窓口で勝田から阿佐ヶ谷までの切符を買い、上野―東京間は新幹線利用にした。この買い方だと、運賃の特例で途中下車のできない「大都市近郊区間」内でも降りられる。

マルス端末を操作した係員の説明では金額は2580円だったというが、この株主の計算では2270円。1時間ほど押し問答の末、株主の主張どおりの金額の乗車券を手書きで作成してもらったという。

この株主は、「係員が旅客営業規則を把握していない印象を受けた」という。2人目の株主も「規則上、本来発売できる乗車券類を“発売できない”と主張して誤発売し、不当に高い金額を徴収している事例が複数発生している」と発言した。

会社側は「国鉄時代以来の複雑な運賃制度のため、経路によっては機械が十分に対応できない区間もある」と説明、「社員教育をしっかり行って、お客様のさまざまな要望に応えていきたい」と、理解を求めた。

鉄道ファンを中心に特殊な経路で移動する例はいくらでもある。かつては、複雑なルートのきっぷ作成をいとも簡単にこなしてしまう頼もしい係員がどの駅にもいた。

安全・安定運転の現場では技術継承の動きが盛んだ。営業の現場でもベテランのノウハウを継承してほしいと思うが、どのJRもみどりの窓口での人手を介した販売から券売機やネットでの販売にシフトしつつある現状では、きっぷのルールに長けた係員の活躍の場は少ないのかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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