老朽で猶予なし、白馬「通年リゾート化」の賭け 身売り・廃業相次ぎ、ようやく動き出す村再生

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岩岳エリアは1980年代終わりから1990年代初めにかけて、150軒ほどの宿泊施設が軒を連ねていた。「ペンションブームもあり、冬のスキー客や夏の避暑客を見込んで宿泊施設を開業する人も県外、村外から移り住んできた」(吉沢氏)。だが当時、30~40代で開業した人々も、今は70歳前後。廃業する人が増え、現在はピークの半数、宿泊施設は80軒近くにまで減っている。「後継者がおらず、残っている人々もほとんどが60歳以上。そろそろやめようかなと言う人が結構いる」(吉沢氏)と言う。

一方、長野五輪に伴う設備投資負担に苦しむ事業者もいまだに残っている。スキー種目の競技会場だった八方尾根スキー場周辺には、五輪前に多くの宿泊施設が大規模な設備投資を行った。借金返済のため、こうした宿泊施設を中心に外国人客の取り込みに積極的に動いた。

リフト運営会社が分立、そろわぬ足並み

いざ外国人客を呼び込もうとして直面したのが、地元住民の意見を統一する難しさだ。ほかのスキー場と同様、白馬村も地元住民が共同出資する小さな企業体が中心となりリフトを運営してきた歴史がある。白馬村でも、1つのスキー場の中で複数の会社がリフトを運営し、リフト券収入を利用客数に応じて折半している。

事業者が分立しているため、共通リフト券やスキー場間をつなぐシャトルバス運営など、エリア一帯で集客を考える方向に舵を切るのに時間がかかった。

スキー客の減少に伴い、事業者の身売りが増え、企業体の数は減っているが、白馬村と同村に隣接する大町市、小谷村の3市村には、10のスキー場に対し、リフトを運営する会社が14社存在する。宿泊施設運営を中心に住民の「数人に1人は社長」という白馬村で、足並みをそろえるのは並大抵のことではなかった。

駅やスキー場同士を結ぶ交通網整備の財源案の1つとして、白馬村役場は昨年から宿泊税の導入を検討している。これまでは住民税を観光向け財源に充ててきたが、今後は社会福祉関連の支出が増えるからだ。しかし、村内の宿泊事業者421施設は5月末、反対の決意書を提出した。

宿泊事業者の中には、借金返済のため積極的に外国人客を取り込みたい事業者と、後継者を立てず自分たちの代で事業を畳もうと考えている事業者がいて、なかなか足並みがそろわない。

ただ、そんな白馬村にもようやく新たな動きが生まれ始めた。白馬観光開発の和田寛社長は生まれも育ちも東京都。東京大学を卒業後、2000年に農林水産省に入省。デューク大学に留学しMBAを取得。外資系コンサルティング会社を経て、2014年日本スキー場開発に転職し、2017年に子会社である白馬観光開発の社長に就任した異色の経歴の持ち主だ。

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