「ほっともっと」赤字転落の先に迎える正念場 商品戦略が迷走、女性客取り込み策も不発に
40代以上の男性客を中心とするほっともっとは、2018年6月まで既存店売上高の前年割れが続いていた。この状況を打開しようと、2018年5月に定番メニューである「のり弁」の価格を300円(税込み)へと約30~50円値下げ(改定前の価格は地域によって異なる)。2019年2月期は広告宣伝費に30億円を投じ(前期比6.6億円増)、テレビCMなどの宣伝活動を強化した。
ほっともっとの2019年2月期通期での既存店売上高は前期比1.6%増と上向いたものの、当初計画していた同7.7%には届かなかった。投下した費用を埋め合わせるほど、増収効果が出なかったわけだ。
商品戦略が迷走し、他業態に対抗できず
売り上げを思うように伸ばせなかった背景には、コンビニや食品スーパーといった他業態との競争激化がある。
高齢化の進展や働く女性の増加、専業主婦が料理にかける時間を削減する流れが続いており、総菜や弁当などの「中食」需要が増加。「今後もいっそう高齢化が進み、中食の利用が増える」(日本惣菜協会の清水誠三常務理事)。これを商機ととらえ、コンビニや食品スーパーは総菜や弁当の品質を大きく向上させてきた。ここ数年は、ドラッグストアまでもが弁当などの食品展開を積極化している。
一方、ほっともっとは「作りたて」や新しい商品戦略を打ち出し、他業態との差別化を図ろうとした。しかし、肝心の商品戦略が迷走し、他業態の追い上げに対抗できていない。
まず、これまで獲得できていなかった女性客などへアプローチしようと、豆腐ハンバーグや根菜炒めなど野菜が多く、副菜の数も多いヘルシー志向の弁当を2017年2月期に投入した。だが、想定ほど客数増にはつながらず、逆に注文を受けても顧客の待ち時間が長くなる事態が発生。使用頻度が低い食材が増えることで、材料の廃棄ロスも増加した。
2018年2月期にはのり弁を平日限定で値下げし、ヘビーユーザーである40歳代以上向けの販売を促進。それでも客数は戻らず、前述ののり弁値下げに追い込まれた。「女性客を取り込む方針だったがうまくいかず、40代以上男性という中心顧客は変わらなかった。(定番商品の展開を再強化するための)広告も効果が一時的だった」と、プレナスのIR担当者はうなだれる。
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