職人と消費者を結び付けるビジネスが熱いワケ デザインが受け入れられないという「課題」
具体的にどのようなサービスを提供しているかは、事例を紹介するとわかりやすいだろう。
星野リゾートが京都府・嵐山で経営する「星のや京都」にて、7月1日~8月31日の期間、ホテルの庭を舞台にした瞑想のイベントが行われる。目玉は、地元の北山杉を原料として織られたオリジナルの蚊帳。参加者は、自然の中、北山杉から織られた蚊帳の心地よい香りに包まれて、深いリラックスを感じることができるというものだ。

「星野リゾート様からの『地元の産品を取り入れたい』という依頼と、地元の林業を結び付けた事例です。現在は販売ルートといっても、デパートなどの小売業が厳しくなっています。そこで、イベント企画などとセットで売っていくというのがわれわれのアイデアです」(金谷氏)
また、大手カフェチェーンが展開している、地域の職人の作品を地元の店舗で販売する、地域限定商品の取り組みにも、同社が関わっているそうだ。地域の産品を都会で売るのではなく、その地域で買ってもらう。より地域に興味を持ってもらい、観光などの交流を促すという意図から始められた取り組みだ。
職人と企業、両者の温度差を近づける難しさとメリット
ただこうした事業にも課題はある。同社で実際に地域限定商品などを担当した三嶋貴若氏によると、難しいのが、職人がつくる商品と、企業側のニーズを結び付けることだそうだ。
「どうしても絵をつけるときの筆跡のかすれかたなど、手作業ならではの違いが出てしまいます。職人にとっては一つひとつがオリジナルの商品なので、それでいいのですが、工業製品として見ると差異は“欠点”になってしまう。職人と企業、両者の温度差を近づけていって、最終的に商品に落とし込むのに時間がかかります」(プロデュース部部長の三嶋貴若氏)
しかしこのように難しさはあれど、結果的に職人側の、商品を見る目や技術も研ぎ澄まされていく、というメリットがあるそうだ。
こうした地場産業に対する商品開発だけでなく、個々の企業などを相手に、お菓子などの商品開発のコンサルティングから、パッケージデザイン、販売先まで一貫して請け負う場合もある。

「われわれが事業を通して目指しているのが、“コト=技術”“モノ=意匠”“ミチ=販路”をプロデュースして、やがてはその企業が自力で商品開発していけるようにすることです。そのために企業のコンサルティングだけでなく、講演会、イベントプロデュース、交流の場づくりと、広い範囲で行っています」(金谷氏)
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