「クワガタを稼業にした」47歳男の波乱万丈人生 垣原賢人が「ミヤマ☆仮面」に変身した理由

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プロレスの世界にはボクシングのようなコミッショナー制度がないため、第三者にプロのライセンスを剥奪されたり引退勧告を受けることはない。このため、プロレスラーは引き際が非常に難しいと言われている。

とくに人気選手が引退するとなれば、プロレス興行の集客に大きく影響しその経営に大打撃を与える。新日本プロレスの人気選手だった垣原は非常に難しい決断を余儀なくされたが、プロレスラーの命とも言われる首のケガを誤魔化しながら続けることはできないと考え、34歳の若さで引退を決断したのだった。

次に選んだ職業は「クワガタ」

そんな垣原が次の職業に選んだのは、なんと“クワガタ”だった。

垣原は現役時代から時間を見つけてはクワガタ採集のために森林に出かける、根っからのクワガタマニアだったのだ。北は北海道、南は沖縄、ときには離島にまで出向いてクワガタを探し歩いた。さらに国内だけでは飽き足らず、インドネシアのジャワ島やスラウェシ島にまで足を伸ばしていたというから驚きだ。

確かに改めて引退試合の映像を見ると、試合後にリングでマイクを握る垣原はクワガタのイラストがプリントされたTシャツを着ていた。

だが、いくらクワガタが好きだからといって、普通の大人ならクワガタを職業にしようとは思わないだろう。しかも、垣原は引退した当時、すでに2人の幼い子どもを持つ父親でもあった。クワガタを職業にして家族を養うことに対して、不安はなかったのだろうか。

「もうコレだ!としか思えなかったんですよね。引退前に、クワガタに力比べをさせるイベントを開いたことがあり、それを本格的な興行にできないかと考えました。

プロレスのときもそうですけど、好きなものには一直線に突き進んでしまうんです。ただ、引退前に長期欠場していた頃は、本当につらかったですよ。首のケガは、プロレスラーとしてはクワガタが羽根を失うようなものですから」

ミクラミヤマクワガタに自らの姿を重ね合わせた(写真:OCEANS)

引退前のケガに苦しんでいた頃の垣原は、ミクラミヤマクワガタという伊豆諸島にしか生息しない珍しい種類のクワガタに強い関心を寄せていた。

このクワガタの移動手段は歩行のみ。ゆえにほかのクワガタのように樹液に集まることもない。

垣原は、飛ぶことを諦めたクワガタに自らの姿を重ね合わせながらも、再び自分が飛ぶことを夢見たのだった。今度は自らがクワガタの化身、昆虫ヒーロー・ミヤマ☆仮面となって。

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