安倍外交、「トランプ接待」の成果はあったのか ゴルフに大相撲、炉端焼きのトランプ狂騒曲
このゴルフ対決はカメラ取材などが厳しく制限され、「臨場感のある映像は流せなかった」(民放テレビ)が、夕刻からの夫人同伴での大相撲観戦は両首脳の一挙手一投足がNHKでライブ中継され、お茶の間にも話題を振りまいた。
トランプ氏の大相撲観戦は首相が提案したもので、これまで慣例だった貴賓席でなく土俵近くの升席観戦となったのも首相のアイデア。千秋楽を迎えた東京・両国国技館に午後5時前に姿を現した両首脳は、警備陣による厳戒態勢の中、手を振りながら場内に入った。観衆は総立ちで拍手と歓声を送り、スマホでの写真撮影などで進行中の取組は数分間中断された。
升席最前列を改造してソファを並べた「特別席」に座った両首脳は、夫人とともに結びまでの5番の取組を観戦した。事前に「場内で座布団などの物を投げる行為を行った場合は処罰されることがあります」との異例の場内アナウンスもあり、警備陣が警戒した座布団乱舞はなかった。
ただ、観衆は1番1番の取組に大歓声を送っているのに、「格闘技好き」とされる大統領はほとんど表情も崩さずに臨席の首相の説明などに頷くだけという、素っ気ない態度に見えた。
貿易や北朝鮮問題で日米双方に違いも
しかし、結びの1番が終わった後、アメリカ大統領杯授与の際には笑顔がはじけた。トランプ氏は黒のスリッパをはいて土俵に上がり、一礼してから「アサノーヤーマ」「スモウグランドチャンピオン」「レイワワン(令和元年)」などと賞状を読み上げ、特注の大統領杯を優勝力士の朝乃山関に手渡すと、拍手で称えて場内を見回した。
このトランプ氏が厳しい表情で臨んだのは、27日昼前からの首脳会談だった。東京・元赤坂の迎賓館で会談した両首脳は、焦点の日米貿易交渉では「早期に成果を出すため協議を加速する」との方針で一致した。ただ、トランプ氏が「8月に発表がある」と述べたのに対し、首相は交渉期限には触れず、双方の立場の違いが際立った。
また、北朝鮮の短距離ミサイル発射については、共同記者会見で首相が「国連決議違反」と非難したのに対し、トランプ氏は問題視しない姿勢を示した。アメリカのメディアも「両首脳の絆に亀裂」と報じた。
両国は今回の首脳会談で共同声明などの成果文書は出さなかった。6月下旬の大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議でトランプ氏が再訪日することもあって、事前に多くの課題は「継続協議」とすることで合意していたためだとされる。首相は7月に予定される参院選、大統領は来年秋の大統領選をにらんでの政治的協議となり、両首脳の友好関係ばかりが前面に出る中、双方の利害と思惑が交錯する首脳会談でもあった。
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