高嶋政伸「平成に大胆な変貌とげた」異色の経歴 「離婚スキャンダル」乗り越えて開いた新境地
私の記憶では、「冬のサクラ」(2011年、TBS)が現在の政伸イズムの礎になったと思っている。政伸イズムって何だよって話だが、要は好感度なんぞ一切無視した、生理的嫌悪感を催させる悪役の妙、である。
主演は草彅剛。今井美樹が田舎の純朴中年・草彅のところに転がり込んでくる。放っておけない心優しい草彅が助けた今井は、セレブの奥様で脳腫瘍を患っている。要は「格差純愛、病気のヒロイン、雪景色」で片付くドラマなのだが、今井の夫役が政伸だったのだ。
DV・モラハラ・マザコンの三位一体で、脳外科医という役。育ちのよさから生まれる残酷さ、金持ちならではの非人道的発言で妻の今井を痛めつける。このときの政伸は別の意味で輝いていた。この二十数年、モヤモヤしていたモノがすっきり晴れたというか、これ以上ない適役だったのである。
吹っ切れた「二世俳優」
これを皮切りに、平成後期の政伸は悪役道をひた走っていく。マイ・ベスト・ヒール政伸は「DOCTORS」(2011~、テレビ朝日)だ。プライドと派閥意識が高すぎるおぼっちゃん外科医の役で、主役の沢村一樹を完全に食った。ジャージ姿で白目剥いて土下座する姿は今でも脳裏に焼きついている。大河「真田丸」(2016、NHK)でも前半を引っ張ったのは、顔圧強めで北条氏政を演じた政伸だ。
何度も放送されて手あかのついた「黒革の手帖」(1982~2017、テレビ朝日)でも、2017年版を盛り上げたのは、巨額の不正な金を貪る予備校理事長を演じた政伸だった。鼻息だけでも薄気味悪さを演出できるなんて。とにかく現在の政伸は、コメディとヒールと生理的嫌悪感のひとり同時多発テロリストとして、確固たる地位を手に入れたのだ。
泥沼離婚騒動以降にヒールとしての暗躍が顕著なので、吹っ切れたとも言える。セレブ一家に育った二世俳優が正義と人格と品格を求められ続けて、その期待に応えてきたものの、最終的には「振り切れた業の表現」に至ったのだ。ある種の解放感とも言える。そう考えると、兄・政宏の変態告白も何か同じ匂いがする。高島さんちの呪縛が解けたような気もする。
元妻・美元も再婚してとても元気そうだし、政伸自身も結婚して子どももできたし。ドラマに出続けること、一家で定期的に芸能報道界隈を賑わせつつ、役者としてのアップデートも怠らないことで、平成30年間を駆け抜けた政伸。令和はどんな政伸にアップデートするのか、そっと見守る。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら