ユーシンの決算書に異例の記述、名指しで前社長を批判
前社長は不適切な経営で深刻な禍根を残した--。ユーシンが1月28日に開示した前2008年11月期決算において、普通の決算書では見られない異例の記述がされている。
前期の経営成績を説明する本文で、07年9月までユーシン社長を務めていた竹辺圭祐氏に触れ、次のようにバッサリ切り捨てている。
「平成18年6月に代表取締役社長に就任した竹辺圭祐氏による極めて不適切な経営により、機会利益を逸失する一方で莫大な過剰経費が発生する等、当社グループの将来に深刻な禍根を残す状況が生じておりました」
その上で現社長の田邊耕二氏が08年2月に最高顧問から社長へカムバックしたことで、本08年11月期には大幅な業績改善がなされた、と賞賛する。
「刷新された経営陣とともに、竹辺圭祐氏による不適切な経営を抜本的に改善した結果、上述のように当連結会計年度の業績も伸長し、現在、世界同時不況の中、新体制で更なる経営の強化に取り組んでいるところであります」。
「極めて不適切な経営」と強い表現だが、前社長の竹辺氏は何かの罪で捕まった犯罪者というわけではない。08年11月期の営業利益が前期比70%近く伸長したのも、前社長の「不適切な経営の抜本改善」というより、主力商品であるキーセットの新規受注と、原材料である亜鉛価格の下落だ。
ここで批判された竹辺圭祐氏は、日産自動車出身で現筆頭株主のRHJI(リップルウッド)から派遣されてきた。一方、田邊耕二氏は創業者の息子。竹辺圭祐氏にバトンタッチするまで30年近く社長を務めてきて、社長交代後も社内に強い影響力を持っていた。この2人は、かつて自動車部品同業であるナイルスの買収を巡って、激しく対立した経緯があった。結局、田邊耕二氏の強い反対が、竹辺前社長ら買収推進派を打ち破り、竹辺氏は会社を放逐される結果となった。
つまり異例の表現の背景は、実は社内事情にすぎない、ともとれる。過激な表現を見る限り、今も怒りがおさまっていないようだ。ただ世界的な経済危機の最中に社内のゴタゴタを決算書で読んだ株主は、果たしてユーシンの現経営陣に対して、どのような印象を持つのだろうか?
(西澤 佑介)
《東洋経済・最新業績予想》
(百万円) 売 上 営業利益 経常利益 当期利益
連本2008.11 78,842 4,766 3,909 1,000
連本2009.11予 60,000 500 200 0
連本2010.11予 61,000 800 500 300
連中2008.05 40,102 2,635 2,350 1,434
連中2009.05予 29,000 200 50 0
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1株益¥ 1株配¥
連本2008.11 31.3 8
連本2009.11予 0.0 8
連本2010.11予 9.4 8
連中2008.05 44.9 4
連中2009.05予 0.0 4
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