食品ロスの大胆削減に「天気予報」が効く理由 試行錯誤を繰り返す小売店や食品メーカー

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需要予測サービス「売りドキ!予報」のタブレット画面(写真:日本気象協会)

品ぞろえや需要予測は、店舗の売り場担当者の「経験と勘」で行われていることが多い。そのため、その日の天気によってカテゴリーごとの大まかな増減はわかるものの、具体的な量にまで落とし込むのが難しかった。

最近は一部大手スーパーなどで自社のデータに基づく需要予測システムを導入している企業もあるが、地方の中小スーパーなどでは対応が遅れている。「データや人材の確保ができていない中小の企業を中心に、積極的に開拓していきたい」と、日本気象協会で需要予測プロジェクトを統括する本間基寛氏は話す。

日本気象協会は「体感気温」をベースにした新しい指標も開発している。季節の始まりや終わり、前日との変化の度合いによって、同じ25度でも人の感じ方は異なるからだ。「暑い」「寒い」といったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でのつぶやきの量と実際の気温の関係も、指標として組み込んでいる。

一足早く導入した食品メーカー

今回は小売店に特化して始めたサービスだが、主に食品メーカーに向けた需要予測は一足先の2017年から展開していた。メーカーの場合は、自社の販売データと気象データを掛け合わせて需要の予測を行ってきた。

例えば、調味料メーカーのミツカンは2017年から導入。気温の変化によって売れ行きが大きく変わる「鍋つゆ」や「冷やし中華つゆ」といった商品の生産管理や在庫調整に利用してきた。「1カ月先までの需要予測を任せている商品では、最大90%在庫を減らせた。欠品ロスも削減できている」(ミツカン)。

コーヒー大手のネスレ日本は、ペットボトルコーヒーの輸送をトラックから船舶へ切り替える際に、日本気象協会のサービスを使用してきた。輸送に時間がかかる船舶では中長期での需要予測が必要になるからだ。菓子大手の森永製菓も、定番のアイスクリーム「チョコモナカジャンボ」の需要予測に活用。在庫を削減し、製造してから店頭に並ぶまでの時間を短縮することで食感を保つようにしている。

こうした食品メーカーには全国的な需要予測で対応できる一方で、小売店向けは「地域や店舗による差が大きく、個々の店舗には対応できていない」(本間氏)という。

さまざまな場所やタイミングで生じる食品ロスに根本的な解決策はなく、地道な取り組みの積み重ねが重要になってくる。そういった意味で、日本気象協会のサービスが小売業界にどこまで浸透するか、行方を注視したい。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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