野村HD、10年ぶり赤字で「店舗2割減」の荒療治 永井CEO「伝統的ビジネスモデルは崩壊した」

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――顧客層別の担当を強化することによって、どのような収益拡大が見込めますか。

日本には1800兆円もの個人金融資産がある。それに対して、われわれの預かり資産はたかだか120兆円と10分の1以下だ。9割以上は預金などの形でほかの金融機関にあり、そうした金融資産を当社の預かり資産にしていくのが最大の眼目となる。全財産を野村證券に預けている顧客は皆無だろう。一般に富裕層では、全財産の約半分が金融資産、残りの半分が不動産や自社株などだ。当社はその金融資産のうち、富裕層でもせいぜい2~3割しか預かっていない。

運用でお金を増やすことに興味のあるのはマスアフルエント層であり、富裕層は自分の資産をいかに効率的に次世代に渡すかに関心がある。当社の相続や事業承継のプラットフォームは非常に充実しており、今後法人・事業オーナーや富裕層に特化した営業担当者がそれをフルに使い切れるようにしたい。一方で、マスアフルエント層の営業担当者は今以上にデジタルチャネルを活用することになるだろう。

ネット証券買収含め、あらゆる選択肢を考える

――デジタルチャネルについては、部門横断的な社内カンパニー「未来共創カンパニー」を4月に発足させました。

これまで野村證券の対面サービスで勝ち残ってきた人たちに、非対面のマスサービスを開発しろと言っても発想が違って無理だ。だから、未来共創カンパニーを作り、そこでカルチャーの違う外部人材を採るなどして新サービスを洗い出す。当社のオンライン契約口座数は約350万、残高は34.5兆円ある。実は日本で最大規模のネット証券会社だ(1位はSBI証券の454万口座)。ところが、この顧客インフラをまったく使っていない。時間はかかるが、拡大させたい。

――確かに非対面のマスサービスはカルチャーが違います。既存のネット証券を買収するのも一法ではないですか。

1つの手ですね。当社にその機能がないなら。当社には顧客基盤があり、(リサーチを含めた)いろんなコンテンツもある。だが、ウチのいちばんの弱点は間口が狭く、敷居が高いこと。LINEと組んでLINE証券(野村ホールディングス49%出資、LINEユーザーの資産形成向けに証券サービス提供を予定)を設立したのもそれに対応するためだ。現段階で具体的なものは何もないが、ネット証券買収を含めてあらゆる選択肢を考えている。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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