野村HD、10年ぶり赤字で「店舗2割減」の荒療治 永井CEO「伝統的ビジネスモデルは崩壊した」

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――そのような取り組みは、銀行部門や証券部門などを全方位に抱えるメガバンクグループのほうが先行しているイメージがあります。どう対抗しますか。

われわれから見ると、メガバンクグループはうらやましい。例えば三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、海外は(持分法適用会社の)アメリカのモルガンスタンレーのネットワークを活用できる。また顧客のM&Aに対してブリッジファイナンス(つなぎ融資)を実施したいとき、銀行部門の巨大なバランスシートを提供できる。顧客に対して、ワンストップですべてのサービスを提供できる優位性はあるだろう。

だが、それは同時に弱みでもある。すべての金融案件を1社に任せて手の内を明かすことはしたくないという顧客もいるからだ。MUFG、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループという3つの金融資本で日本の産業界は色分けされている。3メガバンクグループは、ほかの金融資本系列にサービスを提供しにくいが、われわれはすべてに提供することができる。そして提案力が勝っていれば案件を取れる。それが独立系の強みだ。

メガバンク傘下入りは「ありえない」

――今後、メガバンク系との接近はありませんか。

眼中にない。昔からあらゆる選択肢は排除していないが、メガバンクとの接近は、得るベネフィットと失うものをてんびんにかけると、「独立性の強み」という失うもののほうが大きい。そうした資本系列に入るのはありえない。

――ホールセールとともに、最大の強みである国内証券リテールでも事業の見直しを断行します。

われわれは国内で540万の顧客口座を持つが、収益の約6割は資産ランク上位の顧客層からもたらされている。では、そうした資産ランク上位の顧客に対して、しっかりしたスキルセットを持った営業担当者がニーズに合ったソリューションを提供しているかというと、そうなっていない。例えば、法人・事業オーナーの営業担当者といっても、実際には法人以外に富裕層やマスアフルエント層(マス富裕層)の顧客も担当したりしている。それは非効率だという問題意識が事業見直しの根底にある。

――東京、大阪を中心に店舗を2割削減(現在の156店舗から30店舗以上を削減)すると発表しました。

みんなから「コスト削減ですね」と言われるが、先ほどの非効率性を解消するのが最大の狙いだ。これだけデジタル化が進み、今や誰も銀行の店舗に行かなくなった。ましてや非日常性の高い証券会社の店頭に誰が行くのだろうか。現在、当社は都内に35店舗もある。隣の店まで歩いて行けるところもあり、「日によっては1日の来店者数が5~6人」という店もある。

小規模店舗担当者がいて、エリアの顧客を担当していたら、どうしても先ほどのようなミスマッチは起きる。資産ランク上位の顧客への対応が不十分というだけでなく、ほかの顧客層へのサービスも不満足なものとなっている。特化型の顧客担当制へシフトさせ、東京、大阪ではそれに併せて店舗統廃合も行う。地方では店舗削減は行わない。

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