都立高にも個別指導塾、まずは中堅2校に導入へ 大学進学実績の向上狙いだが、背景に少子化

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ただ、進学実績だけならどの成績層に手をかけるかを変えれば、外部の力を借りなくとも改善はできそうだ。都立高に個別指導塾を導入する狙いは、実はもう1つある。ノウハウの移転だ。

「対象となる2校では、外部講師の指導を教師が見学して、大学受験に対応した教科指導(力)の向上を図ってもらう」(鈴木主任指導主事)。日比谷高校などの進学指導重点校では、受験指導を学校全体で実施するシステムがすでに出来上がっていて、教師の異動の影響を受けにくい。しかし、中堅校以下になると属人的要素が大きく、受験指導に長けた教師が異動すると、その学校の受験指導のあり方が様変わりすることがままあるようだ。つまり、生徒の学力を底上げすると同時に、教師の指導力も高めたいというわけである。

5月の連休明けに「スクールTOMAS」開始

そこで白羽の矢が立ったのが、私立校で学校内個別指導塾を展開しているスクールTOMAS社。都は2018年8月に同社に接触し、9月には数年前に導入して進学実績を上げている中高一貫校を視察した。予算化し、今年3月の入札でスクールTOMAS社が落札した。現在、5月の連休明けの運営開始に向けて、現場での話し合いが進んでいる。

スクールTOMAS社は私立高で、自習室の運営やカリキュラム型個別指導を担っている。しかし、都立高では予算制約などもあり、こうした仕組みすべてが採用されるわけではない。

都とスクールTOMAS社の話を総合すると、既存のシステムをかなり簡略化した仕組みで導入するようだ。「3教科の講師が校内に入るのは土曜日で、年20回(長期休暇を除くと1週間おき)」「個別指導ではなく、少人数授業だが、個人の学習計画や進捗状況チェックはスクールTOMAS社が行って、学校と共有」「高1から高3まで利用できるが、通年利用できるのは高2のみで、高3は12月まで、高1は12月から」「スクールTOMAS社の社員が常駐しないので、平日はIT機器を使った質問型個別指導(モニターを通して、生徒がわからない箇所を質問し、講師が答える)を実施」といった内容のようだ。

都は今年度から3年間、2校でこうした運用をして実績を評価。4年目以降に拡大するかどうするかを決めるという。全国の公立高校で個別指導塾の展開を目指すスクールTOMAS社としては、首都・東京で成果を挙げれば最高の営業ツールになる。そのため、この事業にはエース級の人材を投入する構えだ。

問題もないわけではない。学校内個別指導塾のベースにある、生徒の自発性を高めるスクールTOMAS社による自習室運用は都立高には存在しない。予算の縛りがあるとすると、金のかからないソフト面での工夫が必須になる。

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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