部下を簡単に潰す上司たちに共通する「3大NG」 オットセイのように褒美で釣るのは正解か
2つ目は、報酬に関心を持つと、人は報酬獲得のため最短で手っ取り早いやり方を選ぶようになることだ。1時間勉強したらお小遣いが貰える子どもは、簡単な問題だけを1時間やり、難しい問題には挑戦しなくなる。
成果に見合う報酬は、確かに人を動機付ける。しかし仕事そのものではなく報酬に関心が向くようになり、手っ取り早い方法を選ぶようになる、ということである。
実際には内発的動機付けにも、報酬はある。それは「楽しさと達成感」である。ここで欠かせないのが「自分はこの仕事をこなせる力がある」という「有能感」だ。この有能感は、誰でもできる仕事では得られない。自分の能力を最大限に発揮し、達成したとき、初めて得られる。
そしてこの有能感に、「この行動は自分が選んだ」という自律性が伴えば、大きな満足が得られ、仕事の成果もあがる。心理学者ミハイ・チクセントミハイが著書『フロー体験入門』で紹介したフロー体験は、これを高いレベルで実現した状態だ。
自律性と有能感のいずれか片方だけでは、内発的動機付けは高まらない。自律性と有能感が両方ともない場合は最悪だ。抑うつなどの状態に陥ることもある。
「もっと統制しなければ…」の悪循環
常に好奇心と興味を持ち有能感と自律性を発揮できれば、人は成長し学び続けられる。
逆に管理・統制されると、人は無気力になり、自ら学ぼうとしなくなる。そして統制されないと何もできなくなってしまう。それを見て「もっと統制しなければ」と考えるマネジャーもいる。これは悪循環だ。
本当に必要なのは逆だ。統制はやめ、人の自律性を支援することが必要なのだ。
その人を「1人の人間」として認めれば、人は「自分が有能で自律的だ」と考えるようになり、内発的動機を維持できるようになる。一人ひとりが「これは自分自身で選択して行動している」と心底感じられることが必要なのだ。心理学者シーナ・アイエンガーが著書『選択の科学』で「自己決定感」が大切と述べている点と共通している。
報酬を提供する場合も、その人の有能さを認め、自律性を損なわないように配慮することで、むしろ内発的動機付けが高まっていく。
「エクセレント・カンパニー」や「ビジョナリー・カンパニー」で紹介されている超優良企業は、組織として社員の内発的動機をうまく引き出している。
さらに新世代の組織のあり方を提案するフレデリック・ラルーの著書『ティール組織』では、社員が自分で仕事の意思決定をすることで自律性を持たせて、社員の内発的動機を引き出すことにより、社員が幸せに働き、大きな成果を上げられる仕組みを紹介している。一人ひとりから内発的動機を引き出すことこそ、組織が大きな成果を上げるカギなのだ。
もともと日本企業は、社員の内発的動機付けを重視していた。しかしバブル崩壊後、日本企業は成果主義を導入し、こと細かに社員を統制するようになり、社員の自律性と有能感を損なっている面が目立つようになった。改めて本書を読み、かつての日本企業のよさを見直してほしい。
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