部下を簡単に潰す上司たちに共通する「3大NG」 オットセイのように褒美で釣るのは正解か
デシは報酬で内発的動機付けがどう変わるか実験した。誰もが夢中になるパズルゲーム「ソマ・パズル」を見つけ、使うことにした。
学生を2グループに分け、1つはパズルを解くと金銭報酬を与える条件、もう1つは報酬を与えない条件で、30分間パズル解きをさせた。両方とも熱心にパズルを解いたが、問題はその後の休憩時間の行動である。
無報酬チームは、「パズルは面白い」と思って休憩時間もパズル解きを続けた。報酬チームは、休憩中はお金がもらえないので、パズル解きをやめてしまった。報酬があることで、逆にパズル解きの面白さを感じなくなったのである。
デシは追加実験した。無給で熱心に大学新聞を手伝っていた学生に報酬を支払った。お金が尽きて報酬が払えなくなると、学生は仕事に興味を失ってしまった。
人は誰からも指図されず自分で行動を選べるとき、生き生きと行動する。人は「自律性を持ちたい」と思っているからだ。自律性とは、自分の行動を自分で決めることだ。
外発的動機付けでは自律性が弱まる。「誰かに統制されている」という感覚になり、「自分でこの行動を選んだ」という感覚が弱まる。だから内発的動機付けも弱まるのだ。
デシはさらに追加で、金銭報酬でなく「パズルが解けないと罰する」という脅し文句を使って実験をした。脅し文句は効果があり、パズル解きは順調に進んだ。しかしパズルを楽しむ感覚はすっかり消えてしまった。
人に圧力をかけるという点で仕事の目標押しつけ・締め切り設定・監視も「脅し」の一種だ。これらも内発的動機付けを低下させる。
デシはさらにパズルを2人1組で行い、タイムをより速くさせるグループと、相手と競争させるグループで比較してみた。タイムをより速くさせたグループの内発的動機付けは変わらなかったが、相手と競争させたグループは内発的動機付けが弱まってしまった。他人との競争も内発的動機付けを低下させてしまうのである。
つまり報酬・脅し・競争で、内発的動機付けは弱まったり、消滅してしまう。
人は自らが行動を選択することで、その行動に意味を感じて納得する。選択の機会が、内発的動機付けを高めるのだ。
内発的動機付けに欠かせない「有能感」
一方で報酬が役立つ場面もある。ルーティンワークは報酬で統制することで生産性が上がることがある。ただし「報酬があるときだけやる」という態度が定着しサボる人も出てくる。
報酬を使う場合、注意点が2つある。1つ目は、報酬を使い始めたら、後戻りはできないことだ。金銭的報酬を得るために行動するようになると、その行動は報酬が与えられる間しか続かない。子どもに「1時間勉強したらお小遣いをあげる」と約束すると、お小遣いがなくなると勉強しなくなる。
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