東海道新幹線、浜名湖に津波が来たらどうなる 在来線は浸水想定区間も…地震への備えは?

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東海道新幹線の場合は、津波の心配よりも高速走行中の車両を一刻も早く安全に停車できるか、および構造物の耐震性がポイントとなる。

この対策も車両性能面、線路設備、震源での感知から緊急停止指令までの伝達システムなどで進められている。また耐震性としては、鋼板巻などによる高架橋柱、橋脚の耐震補強、盛土の地盤流動抑止策、バラストの流出抑制、駅舎、駅の吊り天井等の地震対策などがある。

こうしたハード面での対策のほか、さまざまな災害対応訓練(在来線での津波避難誘導訓練、東海道新幹線での旅客避難誘導訓練)なども行われている。地震の規模(一部では予知)、被害想定などの研究は国や大学などの機関で行われているが、まだ発展途上にある。JR東海も防災のための対策を順次実施していく姿勢を示している。

大震災では想定外のことが起きる

対策は進むが、大震災では想定外のことが起きないとは限らない。

鉄道会社だけの問題ではなく、国や自治体とも連携して、半日間ほど東海道本線を不通状態にしても、大地震、大津波を想定した訓練(降車、線路を歩いての避難など)を行う価値はあり、社会的コンセンサスも得られるのではないだろうか。

事前の訓練で身に付いたものがあれば、パニックとなるのを防ぐ一助になるはずだ。

(注)
・表や本文中の津波浸水高、浸水区間は、『津波浸水想定』平成25年11月静岡県公表・平成27年8月一部修正、『津波浸水想定』平成26年11月愛知県公表、『津波浸水想定図』平成27年3月神奈川県公表よりいずれも筆者が判読(ワンランク程度判読誤差も考えられる、JR各社認識と一致するとは限らない)。
・浜松市内では「防潮堤なし」の浸水想定。2020年3月全区間完成予定の「防潮堤あり」の想定は上記表欄外参照。
・相模川・松尾川(茅ヶ崎―平塚)、花水川(平塚―大磯)など、河川付近で線路下の浸水区間が数カ所あるがこれらは割愛した。
内田 宗治 フリーライター、地形散歩ライター

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うちだ むねはる / Muneharu Uchida

主な著書に、『地形と歴史で読み解く 鉄道と街道の深い関係 東京周辺』(実業之日本社)、『外国人が見た日本 「誤解」と「再発見」の観光150年史』(中公新書)、『関東大震災と鉄道』(新潮社)など多数。外国人の日本旅行、地震・津波・洪水と鉄道防災のジャンルでも活動中。

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